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10.補足、深層心理学方面との乖離について
蛇足かもしれないがいちおう付記しておく。
「エヴァ」は心理的なすべてのものに「向き合わない」ということを本にしているので、精密に見ると深層心理学が唱えるところの文脈からは乖離する。
たとえば綾波の出どころはエディプス・コンプレックスに違いないが、エディプス・コンプレックスは父親の権威によって母親が「与えられない」ということであって、このエヴァのように母親の複製が碇シンジに「与えられている」という異様な状況はエディプス・コンプレックスのむしろ破壊に当たる。
アスカを一種のシャドーかアニマと見るにしても、シャドーの側から「ぐいぐい来る」というようなことは心理学の唱えるところを逸脱している。
グレートマザー元型にしても、それは取り込んで守るも同時に閉じ込めるものであって、思いのまま外界をくれるような存在ではない。
深層心理学に引き当てうる心象描写があったとしても、そのこころの事象に向き合うのではなく、「設定」で台無しにしていくのがエヴァの本筋だ。作中のすべては一切の話を為さないパトスの蠢きであって、それ以外の権威を認めないのであるから、つまりこころの性質や構造といったものも認められない。
すべての心理さえ設定で台無しにして、それでこそパトスの極みの射精がありうるというのがエヴァの描写だ。なんでもかんでも母親とペニスと射精とみなしたフロイトもかくや、そのフロイトの学門じたいさえ碇シンジはパトス射精の材料にするだろう。
この段は深層心理学との整合性についての補足だが、そもそも深層心理学に関係があるわけでもないので蛇足だ。
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