出会いのコラム









ある出会いの天才の話



僕自身忘れがちだが、このサイトは、人と人が出会うことを支援する、そういうモットーでやっている。なぜかというと、人と人が出会うことは、人を成長させるからだ。

人は新しいものを取り込んで、過去の自分の矮小さを知り、成長していく。古くから、本を読むことはすごく大事だと語り継がれているけど、それは書物から新しいことを取り入れることができるからだろう。それと同じように、人と出会うことは、新しいことを取り入れることで、人に成長の機会を与えるのだ。そして、本を読むというやつは割と「じっくり」効いてくるものだけど、人と出会うというのは、「がつん」と効くものだ。

自分が中学生だったの時のことを思い出してほしい。好きな教科と嫌いな教科があったと思うが、それはそのまま、それを担当する教師に対する好き嫌いと、かなり近似していると思う。社会科の先生が好きだったから、歴史が好きになった。理科の先生が好きだったから、星座を覚えた。人との出会いというのは、そういうものだ。人との出会いによって、素のままではまず興味の持ちようのない、代数幾何やら関係代名詞とやらにも興味を持つようになる。

逆に今のあなたが、特にこれが好き、というものを持たずにいるのであれば、それは人との出会いが足りていないんじゃないか、と考えてみる余地がある。あなたの場合は、どうだろうか。「ケイコとマナプ」とか、流し読みされて本棚の隅っこに残ってたりしないだろうか。

そこで改めて、出会いを多くするのにはどうしたらいいか、ということについて単純に考えてみる。すると、僕は僕の尊敬する、ある先輩のことを思い出さずにいられない。その先輩は、僕が大学生のときに同じクラブに所属していた先輩だったのだけど、彼は人とのつながりをつくっていく天才だった。

非常にわかりやすい例として、あの先輩は、下宿にケーブルテレビの入会を勧めに来たセールスマンとさえ、お酒を飲みに行ったりしていた。そこだけ話を聞くと、なにがなんやらさっぱりわからない。詳細は、こうだ。そのセールスマンは、気のいいあんちゃんであることには間違いないのだが、あまりに何度も売り込みにくるので、先輩としては正直辟易していた。そして、あまりに無碍に突っぱねるのも気の毒だということで、そのときマイブームになっていた将棋、こいつで決着をつけようと思ったらしい。

売り込みに来た彼に対して、「この勝負にあなたが買ったら、入会してやる」。その発想もすごいけど、本当にそれをやってのけるところがすごい。その勝負を受けたセールスマンもかなり粋なやつだと思う。くそ暑い夏の盛り、冷房もないその先輩の部屋で赤の他人の男が2人、将棋盤を挟んで真剣勝負。ああ、なんてバカで、パワフルなんだ。

またきっちり負けるところもその先輩のおいしいところで、そのときお金がなかったので、入会するためにアルバイトまでしたという覚悟の入りようがまた男らしい。結局、そのセールスマンもあまりに面白かったためか、契約にはこだわらず、ただの飲み友達になったらしいが。

この先輩はある種の天才であって、凡人には真似できないものがある。でも、僕はこの先輩を思い出すたび、人と人をつなぐのは、善意や気質じゃなく、パワーなんだなと再確認させられるのだ。もちろん、悪意の人や孤独屋の人では話は別だが、まずありきたりな善意は誰にでもあるのであって、また人とお付き合いする気質ぐらいは誰でも持っている。にもかかわらず、出会いがそうそうは生まれないというのであれば、結局そこに足りないのは、パワーなのだ。機知に富んでいるとか、心が広いとか、そういうことを全部ひっくるめた、パワーってやつが。

僕自身、自分にパワーが不足しているときは、「忙しいから出会いどころじゃない」とか、「見境なく付き合ってたら疲れる」とか、「友人は数じゃなくて質だ」なんていろいろ言い訳をしてしまうけど、僕はそういいながらも、それがうそっぱちであることは、心のどこかで知っている。そういうときの僕が、いちばんみっともないんだろうな。

個人名を出してしまうとアレだが、このサイトの一番の協力者であるルナさんも、その意味ではパワーがある。彼女は、僕のこのチンケなサイトをみて、「よし会ってみてやろう」と思ったのだ。普通、そうはなかなか思えない。僕とルナさんが実際に会うに至ったのは、僕の功績ではなく、彼女のパワーある人柄の功績だ。

ルナさんと僕との話が出たところで、あなたと僕の話をしてみよう。僕は基本的に変わり者ではあるけれど、人並みに女性とデートなどもする。友達とカラオケにも行く。きっと、今これを読んでくれているあなたも、それぐらいは当たり前にしているはずだ。だから、もし僕があなたと同じ学校のクラスにいたり同じ会社の部にいたりしたなら、普通に話をしているはずなのだ。だけど、実際にはなかなかそうはならない。そりゃそうだ、僕だって、同じ企画のサイトがあったとして、「じゃあいってみよう」なんてすんなり思えない。そこにある壁を乗り越えるのは、本当にパワーがいることなのだ。それは僕が凡人であるからにはしょうがないことだけど。

でも僕は、凡人だからって諦める気にはなれない。なぜかって、悔しいからだ。人との出会いを少なくして、彩りのない生活をして、それは僕にパワーがないからですなんて、どうしても認めたくない。だから僕はずっと、自分に鞭を入れて、パワーのあるふりをして生きている。そうしてればきっと、いつか本当のパワーが身につくんじゃないか、なんて期待してもいるのだ。

僕はこのサイトから、僕自身が色んな人と出会えればいいと思っているし、またこのサイトに来てくれる人が、また色んな人に出会えればいいと思っている。そしてそれよりはるかに、僕自身が生活の中で、無数の出会いをモノにしていけるパワーを持てるようになりたいと思うし、あなたも、そのパワーを少しでもここから拾っていってくれればいいと思っている。そして僕とあなたが、それを実現したとき、このサイトは不要のものになる。そうなれば、それが一番いい。その点は、きっとあなたが想像している以上に、僕はマジメに思ってたりするのだ。

僕やあなたが努力したとして、天才であるかの先輩のような領域には、最後まで及ばないかもしれない。けど、だからって放棄するのは筋の違う話だ。僕はひきつづき、自分に鞭を入れてがんばってゆこう。古今東西、パワーのないやつが一番みじめなやつ、その真理は変わらないし、僕はそんなみじめな存在になることを甘受するつもりはないのだ。

僕がそう思っているってことは、あなたも含めてみんな、こっそりそう思っているに違いない。またいつか、あなたのパワーについてのエピソードや、パワー不足の笑い話、聞かせてください。





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