インド旅行記っす
→デリー
→ジャイプルとアーグラー
→カジュラホー
→ヴァラナシその1
→ヴァラナシその2
→ヴァラナシその3
→ヴァラナシその4
→ヴァラナシその5
→ヴァラナシその6
はじめに
「インド旅行記っす」という、当時の表題のままこれを掲載する。ここでいう「当時」というのは、おそらく現在から15年前、2001年の初頭ぐらいのことだ。これはまだわたしがまだ大学生のころ、二度目の留年をしてのんびりした"六年生"をしていたときのものになる。
当時、インターネットによる個人発信の黎明期にあり、なんでもない個人がそれぞれに「ホームページ」を立ち上げるということが流行していた。わたし自身もその流行にあやかって(実際には、暇で他にすることもなかったので)、いかにも好き勝手に手作りしましたという風体の「ホームページ」を立ち上げ、その中の一コンテンツとして「インド旅行記っす」を掲載していた。その他にもコンテンツはあったが、どれも読み物であった。それら好き勝手に書かれた読み物の中で、唯一この「インド旅行記っす」だけは今読んでも面白味があると思われたので今さらここに再掲載することにした。内容は、まったく何でもないただの旅行記だが、世の中に数人はいるはずの、わたしに親しみを覚えてくれている友人らに向けて、「あなたと同世代のとき僕はこのようだったよ」ということを面白く開示するのに有益だと考えている。もし後日、可能であれば、コンパクトカメラおよび「写ルンです」で撮り進んでいった当時のいくつかの写真と、当地で手書きし続けた一冊の日記ノートなどもスキャニングなどしてアップロードできたらよいと思っている。きっといくつかの笑いを引き起こすことだろう。いつのことになるかはわからないけれども……
旅行記にある通り、このインド旅行は単独行であり、わたしにとって生まれて初めての海外旅行でもあった。旅程は2000年11月1日から12月12までの四十二日間となっている。旅行記は日記様の形式で書かれており、今読み返すと面白いことに、わたしはタージ・マハルの夕暮れの中で二十四歳の誕生日を迎えていたりする。ただ残念なことには、この旅行記は旅程の半分にも満たず打ち切られている。当時のことを回想すれば、書くのに飽きたのだろうし、無学者なりに読み物になるよう一定の様式を構築しながら書き続けるということがいかに精力を要するかということを思い知らされたということでもあっただろう。つまり中途で投げ出されている。道程は、デリーから始まり、ジャイプル、アグーラー、カジュラホー、ヴァラナシ、ゴーラクプル(クシーナガラ)、ガヤー、ブッダガヤー、カルカッタ……そしてデリーに戻り帰国する、という順であったはずだが、旅行記は11月17日あたりのヴァラナシで途絶えている。旅行記は帰国後、当地で手書きし続けた一冊の日記ノートを頼りに書き進められたはずで、その手書きノートとまだ新しい想い出とを合算すれば書き連ねるべき内容はいくらでもありえたはずだが、けっきょくは書ききれず未完となった。
今さら書き足す類でもないのでこのままそっとしておこうと思うが、今になって最後の日だけを書き足しておきたく思う。
(追憶、12月12日)
わたしがデリーから再び日本へ帰国しようとするとき、わたしはとてもさびしくなり、自分の今いる場所から「離れたくない」と直情に感じていた。その強い感情に、自分がセンチメンタルになることだけは許さないとして、「また来ればいいだけだろ」と遮二無二"意志"でわたしは抗していたように覚えている。デリーの、すっかり慣れてしまった土埃の、メイン・バージャールの街角で。そして最後の最後、もう夜になった空港から飛行機が飛び立った。そのときわたしは飛行機の窓から、黄色い明滅に光るすさまじいインドの世界を見たのだ。数億は並んでいそうな、ことごとくの古典的なガス灯が、地上から飛行機を燃やしそうな勢いで光っていた。それは十五年経った今も、瞼の裏に焼き付いている。その光を想い出すと、確かに当時のわたしが吠えたように、すべてのことは「また来ればいいだけだろ」で済みそうだった。わたしはまだ何も忘れていないのだ。インドがどうとか関係ない。地球上のどこのことであっても同じだ。ずっと同じことだけが続いている。つまり、"センチメンタルになることだけは許さない"。ではまた、フィル・ミーレンゲー・ジー!
[インド旅行記っす/了]
以上、この追憶を以ってこの「インド旅行記っす」は締めくくりとさせていただきたい。
当時、ジオシティーズという名前自体がよく知られていた無料のレンタルサーバーにアップロードされていたこの「インド旅行記っす」は、なぜか十五年間も放置されたまま消去されずにあった。ふつう数か月間更新のないウェブサイトはサーバー管理側から自動的に消去されるのだが、おそらく管理するサーバー台数が急激に増えていった当時の状況の中、物理的に管理しきれなくなったサーバーの一つにひっそりとこの「インド旅行記っす」は生き残り続けたのだろう。その僥倖は、ありがたがるというよりは笑いたくなるような類だが、何であれ悪くない話だ。せっかくなので楽しんでもらえたらと思っている。
2016年6月6日 九折空也
インド旅行記っす
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→ヴァラナシその3
→ヴァラナシその4
→ヴァラナシその5
→ヴァラナシその6
(なお、古すぎてリンクしなくなったhtmlコードのソース群から各記事をサルベージしてここにアップロードしてくれたのは僕自身ではなくて協調性に優れた或る友人だ。この場を借りて感謝する)
(ついでに、当時の「ホームページ」の全コンテンツは→こんな感じだった。なかなかひどいところもあるので、そこは読むというよりは半笑いでどうぞ。そーゆー時代だったのである)