パーティのコラム









第一回パーティ、前編!
(written by Luna)





※以下前編は、女性参加者ルナさんの寄稿です。





雨、である。記念すべき”Quali,”第1回パーティーの日だというのに。

そういえば、管理人・九折さんに初めて会ったときも雨だったなぁ。一体どっちが雨男/女なんだか。よし、 この際そんな不名誉な称号は、彼に押しつけておくとしよう。

なんて、くだらないことを考えながら、私は、蒸し暑い新宿駅構内を足早に歩く。約束の時間はとうに過ぎている。とにかく、早く行かなくちゃ。新宿にきたのは初めてだけど、たしか東口を出れば、本日の集合場所・スタジオアルタはすぐそこにあるはずだ。 階段をかけ上がり、折りたたみ傘を広げて地上へ一歩踏み出す。地下にいたときと比べて、風がある分いくらか涼しい。ホッと一息…ついてる場合じゃない!九折さんに、着きました、と電話する。

ほどなく、九折さんが現れた。すっかり馴染みの挨拶をかわす。おっす。あー、どーもー。

彼はやたら大きくて、可愛い柄の傘をさしていた。内心すごくウケていたのは、彼には内緒だ。

今回は、ともかさんという女性と、九折さんの友人F氏が参加することになっていたのだけれど、お2人とも仕事で遅くなるとのことだったので、ひとまず私と九折さんの二人で店へ向かう。途中、九折さんは、遅刻を詫びる私を快く許してくれたばかりか、「わざわざ来てくれてありがとうな。」とねぎらいの言葉までかけてくれた。こういう小さな一言で人の器量って測れるよなぁ、とつくづく思う。 もちろん、この場合私が悪いのだから、別にねぎらいの言葉なんてかけなくったっていい。怒ってしまってもいいくらいだ。そこであえて鷹揚に許し、恐縮する相手の気分を軽くするような言葉をかけられるのは、すごいことだ。

スコティッシュバー「ヘイゼルバーン」は、歌舞伎町のさくら通りを少し入ったところの、雑居ビルの地下一階にある。今回のパーティーがなければ、私がこの扉を開けることは、きっとなかっただろう。そもそも店の存在自体、知らずに一生を終えることになっていたに違いない。そう思うと、すごくワクワクしてきた。九折さんにドアを押さえてもらい、中に入る。彼はこういうことが自然にできる人だから、とても気分良く過ごせる。エスコートだとか、レディーファーストというモノについて、賛否両論あるけれど、私は賛成派。お姫様みたいに扱ってもらう必要はないけど(それはそれでちょっと怖いし)、ほんのちょっと自分に注意を払ってくれてるな、っていうのを感じられるだけで嬉しくなるものだ。まぁ、そういう扱いに値するほどのいい女にならなければならない、という課題も出てくるのだけど。

オレンジ色の照明がほのかに灯る店内には、お客がほんの数組といったところ。うーす、と九折さんが中へ入っていくと、店の奥から威勢のいい女性の声が聞こえてき た。「あら、久しぶりじゃない!」。声のした方を見ると、その威勢のいい声にピッタリの、元気のよさそうな女性店員が こちらへやってきた。二人は、最近どうしてたの、などといったありきたりの会話を交わしていたのだけれど、その調子がリズミカルで、とても息が合っている。ふと気づくと店全体の雰囲気も、我々を歓迎するかのように暖かだ。頻繁に通っていた店なんだな、ということがよく分かった。その空気につられて、少し緊張していた私も一気にほぐれてしまった。予約客があったにも関わらず、奥のテーブルへ通してもらい、席に着く。

腰を落ち着けて、とりあえずは九折さんと2人で、一杯目。頼むのはもちろんスコッチだ。「この子には甘めのカスクを。」 九折さんが先程の女の人に言うと、彼女は目を丸くして、私と九折さんを代わる代わる見て言った。 「えっ、ちょっと、大丈夫なの?」

カスクというのは、樽から出されたスコッチを、水を加えずそのまま瓶詰めしたものを指す。逆に言うと、普通に流通しているスコッチは、瓶詰めされた段階で、メーカー側で加水してあるということだ。当然ながら「カスク」は、加水がない分、アルコール度数が高い。普通のスコッチが42度前後なのに対して、カスクは50〜70度ぐらいになる。彼女の、大丈夫なの、という言葉はそういう意味だ。前回のデート(?)で、私がお酒に強いことは立証済みなので、二人して大丈夫、大丈夫、と笑顔で答える。この辺りが、私を可愛い女から遠ざけてる一因だと自覚はあるんだけど。まぁ、別にネコかぶるつもりもないし、思いっきり飲んじゃおう。

スコットランド伝統料理・ハギスと、カスクのスコッチがやってきて、それらを楽しみながら 互いの近況を話す。彼は現在転職活動中で、私も就職活動の真っ最中だから、自然その話題も飛び出す。 もう落ちてしまったのだけど、私はEという会社を第一志望にしていて、E社がどんなに好きか、ということを色んな人に話していた。もちろん九折さんにも。すると、なんと、彼もE社の中途採用に応募したというのだ。人との出会いが面白いと思うのは、こういうときだ。それぞれ違う人生を歩む者同士が、出会うことで影響を与え合う。ある人に出会ったことで、それまで気づかなかったものに気づく。興味を持つ。 彼は私と出会わなかったら、E社を受けてみようなんて思わなかったかもしれない。 私が彼に出会わなかったら、スコッチの美味しさを知りえなかったのと同じように。彼の持つ世界を少しだけ継承して、私もまた、彼に自分の世界を少しだけ分けてあげる。それってとっても素敵なことじゃないだろうか。

30分が経過した頃、九折さんは他参加者の状況を確認するため、電話をしに外へ出た。

さあ、夜はまだ長い。新しい出会いはすぐそこだ。今度はどんな世界をもらい、私の世界から何を与えられるのか。

期待に胸を膨らませながら、スコッチをちびちびと飲んだ。はて、このスコッチの名前は、なんだったろうか。なじみが無い単語なので、どうにも覚えにくい。たしか、スプリングバンク・・・、だったかな。


後編へ!


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