渋谷パーティ会場へのご案内!
→意地でも集合と会場を教える図はこちら
もちろん図を見ていただくのが一番早いです、よろしくお願いしますm(__)m
集合場所
JR渋谷駅西口から歩道橋を渡り階下、「京都ダイコク」ドラッグストア前
(渋谷区桜丘町1-7 →グーグルマップはこちら)
会場
「京都ダイコク」の脇道に入り、線路沿いを直進、突き当たって右折80メートル右手ビル一階「東京POTATO」
(東京都渋谷区鶯谷町8-10 →グーグルマップはこちら)
到達のヒント
・あまり知られていないことですが、JR渋谷駅というのは、それぞれの出口で四分割されています。ハチ公口、宮益口、東口、西口です。
それで、今回は西口に来てもらいたいのです。
・が、この西口に、地下から到達できる出口はないのです。
どうか諦めて地下からはハチ公口に出てください。そしてハチ公口からは東急百貨店の1Fをまっすぐ抜ければすぐ西口です。
下記にわかりやすいよう案内のお話を写真付きで示しておきます。なにとぞお間違えのないようお集まりくださいませ。
まあ何にせよ、上記の図を見てもらうのが、一番わかりやすい。はず……
というわけで、なんとかしてたどりつけよ、迷うんじゃねえぞ><
九折より
渋谷の道案内人
「ハァ?」
と背の高い男は言った。強い声だったので郁子は思わず驚いた。
驚くほど強い声だったのに、地下鉄構内の雑踏は、誰も足を止めない。誰も振り向くふうでさえなかったので、郁子は違和感に戸惑った。
「あの……」
「あのさ。地下からは、渋谷の西口には出られねえよ。ほぼ」
背の高い男は、つっけんどんで郁子を驚かせたが、冷たい男ではないようだった。男は指を天井に向け、
「西口に行くなら、ベタに、まずハチ公口に出るべきだろ」
と言った。相変わらず強い声で、声は郁子の下腹部に響く。
「ハチ公口に出るには……」
「8番出口。こっちだ」
郁子は男が強引に歩き出すのに、連れられてゆく形になった。男はこのあたりに詳しいらしい。
8番出口へ案内する表示板を、郁子は途中で見失ったが、男の進むとおり間口の広い階段口を上っていくと、誰でも知っている渋谷駅のハチ公口に出た。
Qフロントのモニタビジョンが煌々とスクランブル交差点に照っている。
「西口いくならさ」
「はい」
「TOKYUの中を抜けていけよ、外回ると遠いんだよ」
男はまた、こっちだ、と指で郁子に合図をして歩き出した。郁子はまた、男の背について歩いていくことになった。
東急百貨店の一階フロアはきらびやかで、買い物客でごった返している。
が、館内はうねっておらず、ただまっすぐ館内を抜けるとすぐに西口に出た。
「ここがモヤイね。モヤイ像」
歩きながら男が指差すほうを振り向くと、大きな男の顔面を模した石像があった。
「モアイ像?」
「モヤイ像。モアイ像には、こんな髪の毛生えてねえよ」
言われてみると、石造にはウェーブした長髪がかたどられていた。
モアイとモヤイの違いについて、気になったが、男は由来に興味がなさそうだったので、郁子は訊くことを控えた。
待ち合わせの定番、西口モヤイ像、と男が言うので、郁子もつられて、
「西口モヤイ像」
とつぶやいた。
たしかに寒空にたくさんの人が待ち合わせをしているようだった。
背の高い男は、やはり冷たい男ではないようで、郁子を最後まで案内してくれるようだった。
郁子は、はじめは驚いたが、同時にこの男のことを嫌いではなかったので、最後まで案内に甘えることにした。
「京都ダイコク? ああ、あの歩道橋の下だ」
モヤイ像を背に、男が指をさすと、たしかにバスターミナルの向こう、大きな交差点に長い橋げたが掛かっていた。
男はまた、郁子に向けて指をひっかけるような合図をし、勝手に歩き出した。郁子も、何も言わずその背についていった。
仕事帰りの人が往来する、歩道橋の階段を上がると、郁子にとっては見慣れない渋谷の景色が広がった。
「あれがセルリアンタワーね。ふつう、おれらには用事ないけど」
(渋谷の、こっちにも、こういう街があったんだ。知らなかった)
郁子はしばしば渋谷に訪れていたが、桜丘町のほうへ出るのは初めてだった。
「で、あれだろ。京都ダイコク。青い、釣具屋の下だ」
男が見下ろす階下に指をさすと、そこには「京都ダイコク」と太い文字の看板が出ていた。店先にまで商品を出し並べ、商売熱心に見えるドラッグストア。
「で、線路沿いの脇道といえば、こっちだ」
男は勝手知ったる様子で高架沿いを右に入る。
男が気分よさそうに歩いていくのに、郁子も「はい」といって、従順についていった。
見慣れない、線路沿いの路地には、独特の雰囲気が漂っていた。
裏道には違いないが、渋谷の線路沿いなので、静かな活気が染み込んでいる。
(そっか、こういうところで遊ぶ選択肢もあるんだ)
郁子がこっそり浮かれ始めていたところ、
「おい、ここ結構タクシー通るからな。後ろ気を付けろよ」
と男がたしなめた。
線路沿いの道はまっすぐに伸びている。
月は出ていないが、空は妙に明るかった。
(今日って満月じゃなかったっけ)
空はよく晴れている。
しかし空を見渡しても月は見当たらなかった。
「ここから、少し住宅地っぽいですね」
「ん? ああ」
だんだんと調子になじんできた郁子が歩きながら言うと、男は軽く受け流した。
「この先は、芸能人の住むマンションとか多いらしいよ」
「へえ」
「そういうエリアだからな」
やがてセブンイレブンの前を通りかかった。道中でこれが唯一のコンビニだが大丈夫か、と男は郁子に念押ししたが、郁子はとくにコンビニには用事がなかったので、素通りした。
「もうまもなくだ。あそこが突き当たりだな」
男の指差した先に着くと、清風堂という古い看板が出ていた。
突き当たりを右折すると、ちらほらと、すでに渋谷とは思えなくなった空気の中に、落ち着いた店が何軒かある。右手には音楽院があった。
その飲食店の並びの、まさに終端にまで歩き、この先にもうお店はないよね、と思ったところ、
「あ!」
一階の店舗に「代官山 TOKYO POTATO」の表示があった。
ここだ。
代官山、と店名についているからには、代官山からも歩いてこられるぐらいの距離なのだろう。
ありました! と、郁子が振り向いて報告しようとしたとき、背の高い男の姿はすでにそこになかった。
「あれっ?」
まるきり、気配ごと消えてしまっている。
「案内人さん……?」
代わりに、空の当たり前の場所に、ごく当たり前のように、月齢に決められた満月が光っていた。それによって、やはり空が明るい。
どこに行ってしまったのだろう。
まさか、という気が、郁子はした。
それは荒唐無稽なことだったので、気のせいだ、と郁子は思い直すことにした。
案内人の話はわかりやすかったし、ぶっきらぼうだったせいで、逆に記憶によく刻み込まれた。
地下からは渋谷の西口には出られないよ。
まず8番出口からハチ公口に出て、東急を抜けていけよ。
モヤイのところに出る。モヤイのあるところが西口だよ。
モヤイから歩道橋が見えているだろ、あの歩道橋の下が京都ダイコクだ。
線路沿いを行くというのは、京都ダイコクの脇の路地だよ。
線路沿いを、ずっとずっとまっすぐ行くと、途中で住宅地みたいなマンションがあったり、セブンイレブンがあったりで、やがて清風堂の看板に突き当たる。
そして右折して、飲食店の並びの終端がここだ。
東京POTATOの建屋をのぞき込むと、通路に入口が並んでいる。
一番手前のドアが、バー東京POTATOの入り口で、そのもう一つ向こうのドアが、貸し切り会場だ。
人数によっては貸し切り会場でパーティは開催されているはず。
まさかね、という気が、やはり郁子はしていた。
自分を案内してくれた、あの案内人が、このドアの向こうにいるような気がしていたのだが、それはありえないことで、気のせいであるはずだった。
[渋谷の道案内人/了]