恋愛心理学のコラム









恋愛心理学 その2 仲良くなる心理テクニック




以前、恋愛心理学その1を書いた。そこで、相手の目を見ること、距離を詰めること、名前を呼ぶことを勧めた。

今回は、そういう肉体的な動作のことではなく、心の状態や、どういうコミュニケーションを取るべきかについて、書こうと思う。

前回、心理学を何かの魔術と思っている人は、心理学を学んで人の心に疎くなるタワケだと、くどくどと書いた。今回はもう、そういう教条的なことを書きたくない。

だから、今回はテクニック的なことをメインに書こう。そのほうが読む側は面白いだろうと思うし。そして読んでくれる人は、テクニックはたかがテクニック、本当に大事なのは人間の器量だ、と思っておいてほしい。前提として。

とまあ、前置きはそんなところで、本題に移ろう。相手の好意を得るには、当たり前の方法もあれば、意外な方法もある。また、人間は意外と、自分の心の状態に無頓着なものだから、あなたが自分を観察する一助ともなったら幸いだ。


[好意の返報性]

好意に対しては、好意が返ってくるという原則。
とても当たり前だ。誰だって、自分のことを好いてくれる人の存在は嬉しい。

ところが、この当たり前のことが、けっこう見過ごされている。

まず、「好意をもちつつも、相手に伝えない人」がかなり多い。
それはもったいないことだ。ちゃんと言葉にして、伝えよう。

もちろん、いきなり「死ぬほど愛していますハァハァ」と言ったら、相手は走って逃げるだろう。もっと軽い、「あなたといるとなごむ」「あなたとしゃべるのは楽しい」、そういうメッセージで十分だ。それは軽くても、相手の中にしっかり刻まれる。それが、好意というものの威力だ。

そして次に、「褒めはするけど、好意を伝えてない人」も多い。これは、評価を伝えて好意を伝えていない、と言ってもいい。

カラオケに行って、「○○さん歌うまいね」と言われる。それはそれなりに嬉しいことだけど、これは好意を伝えるという点においては、30点ぐらいだ。どうせ伝えるなら、「○○さんの声、好き」と伝えたほうがいい。はるかに相手の心に残る。

好意をもてば相手にも好意を持ってもらえるというのは、幻想だ。

だけど、好意を伝えれば相手からも好意が返ってくるというのは、真実だ。

好意の返報性という言葉と合わせて、好意を「伝える」のが大事だと、覚えておこう。

ところで、ストレートに好意が伝えられないときは、「先輩のあいだで評判いいよ」とか、「知らないところでけっこうモテてるみたいよ」と、伝聞形式にするのもテクニックの一つだ。なぜかこれでも、それを伝えた人間に好意が返ってくるのだ(ちなみに、これらの心理学の法則は、学者さんたちが大真面目に実験をして、その結果に基づいて提唱しているのだから、信用してあげよう)。

ただし、「Aさんがあなたのことを好きらしいよ」などといってしまうと、Aさんとその人がラブラブになってしまったりすることもあるので注意だ。


[自己開示]

自分のことを相手に伝えることを、自己開示という。自己開示に対しても、原則、好意が返ってくる。

打ち明け話をされると嬉しいものだというのは、誰でも知っていることだろう。打ち明け話というのは、自己開示の典型的なもので、相手に対する信頼や、自分のことを知って欲しいという気持ち、仲良くなりたいという気持ち(親和欲求)を示す行為だ。要するに、相手に好意を示す一つの方法である。だから先に述べたように、返報性の原則によって好意が返ってくる。

テクニックとしては、「実は」の切り出しで、話をするという方法がある。もちろん、話の内容としては、誰にでもは話せない、内緒話のほうが効果があるといえよう。「あたし明日が誕生日なんです」と言うより、「実はあたし、みんなには7月って言ってありますけど、本当は明日が誕生日なんです」と耳打ちするほうが、効果がある。ちなみにこれは、ホステスがよく使う手だ。

ただし、初対面でいきなり幼少期のトラウマについて切々と話し出しては、ただのヘンな人だ。そこはバランス感覚と常識で判断するしかない。また、あまり打ち明け話を乱発して、八方美人というラベルを貼られないように注意だ。

[不協和の原理]

これは、心理学が好きな人でも、意外に見落としている原理だ。
ちょっとややこしくなるが、人間の心は、矛盾を整合させる方向にはたらく、という原理だ。

これを応用すると、「お願い事」をすることで、相手の好意を得ることができるという結論になる。

これは奇妙な現象で、すんなりとは理解できないと思う。
例をあげて説明しよう。

あなたが、新幹線に乗ったとする。あなたの手荷物は少々重たく、自分で網棚に乗せるのはしんどそうだ。そして、あなたは向かいの席の男性に、自分の荷物を網棚に乗せるようにお願いする。そして男性は、よっこらしょとあなたの手荷物を網棚に乗せる。

このとき男性の側は、見知らぬ相手に対して、奉仕したことになる。
そのときその男性は、あなたを好きになるか、嫌いになるか。
答えは、「好きになる」だ。

嫌いな人に対して奉仕することは、矛盾があり、不愉快なことだ。こういう不愉快な矛盾を、「不協和」という。そして人間の心は、不協和を解消、もしくは未発にする方向に、心を動かす。

すなわち、その相手のことを好きになるのだ。それによって、「好きな人に対して奉仕をした」という、不協和の無い状態を作るのだ。

少し信じがたい話かもしれないが、この現象は確かに存在する。

思い出して欲しいのだが、あなたが誰かに、「カメラのシャッター押してください」と頼まれたとき、相手に好意を覚えないだろうか。おそらく、自分がお願いして相手にシャッターを押してもらうより、自分がお願いされて自分がシャッターを押すほうが、相手に好意を覚えるはずだ。

そのほかにも、道を訊いて教えてもらうより、道を訊かれて教えるほうが、相手に好意を覚えるし、ライター貸してくださいという一言だって、ささやかに好意を覚えてしまうものだ。

この現象はまったくもって奇妙なものだ。とりあえず説明する原理としては、この不協和理論しかないので、そういう題目にしたけど、僕としては、もっと複雑な原理が輻輳しているんじゃないかと思っている。

まあさしあたって、お願い事が相手の好意を引き出す、ってことは間違いなくあるのだ。ただし、礼の一つも言わなければ台無しなのは当然だし、ノド乾いたからエビアン汲んでこいとか、過剰なお願い事はNGだ。常識と知恵で、うまくお願い事をしてみよう。


というわけで、3点、好意の返報性、自己開示、不協和理論に基づくお願い事の効用、について書いてみた。書いている僕自身が、色々大事なことを思い出したていたらくなのであまり偉そうなことは言えないが、さてあなたには何か新しい発見があっただろうか。そうであったなら嬉しい。その発見が、あなたの人生に、わずかでもプラスになりますように。





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