恋愛相談のコラム









本当のセックスが知りたいあなたへ その1

〜 性欲についてのホントの話 〜







―――恋愛の中心にはセックスがある。恋愛とは、セックスとその前段階の手続きのことだ。恋愛の歓喜とはセックスの歓喜であって、最高のセックスが出来る関係を僕たちは最高の恋愛と呼ぶ。だから、ずぶずぶのセックスに溺れたことのないオンナは未熟であり、これからも溺れることのないオンナは不幸だ。セックスに溺れない恋愛は恋愛未満、いわば恋愛の見学に過ぎず、それを続けているとやがてお肌がカサカサになる。

と、恋愛について断言することができたなら、恋愛にかかわる話はどれだけラクになるだろう。実際には、こんなことなかなか断言させてはもらえない。なんというか、無言の世論とでも言うべきものに抑圧されてしまう。「愛の無いセックスなんて!」という具合に、反発と軽蔑を買ってしまうのだ。セックスに愛は要りません、などとは僕は一言も言っていないのだけど、なぜか僕の主張は勝手に肉欲至上主義と安易に誤解されてしまう。

今回は、セックスの話をしようと思う。どちらかというと、触れたくない話題ではある。僕はセックスをするのは好きだが、セックスについて論じるのは好きではない。なぜかというと、それはどうしても独りよがりな、ヘタすれば自慢話めいたサムい話になってしまうからだ。加藤鷹を除いては、誰もセックスについて語るべきではない、とさえ僕は思う。

それでもここで、その禁忌を破って話をしようとするわけだが、それはなんだ、実際のところ僕宛に、セックスについての問い合わせめいたメールがたくさん来ていて、そこまでみんな興味があるならガンバって話してみようという気になったからだ。そんなわけで、僕は恥ずかしさに耐えて話すことにする(ホントは、何について話すのでも恥ずかしいのはあるのだけど)。

そういうことなので、いくらかサムい部分は出てくるとは思うが、そこは話題が話題だけにしょうがないと、読者のみなさんは大目にみてやってほしい。

それでは、セックスについての話をします。

今回は、テクニカルな部分の話ではなく、もっと本質的な話です。

セックスというのは、リアルで具体的で、かつ神秘的なものです。

恋愛の中心に据えるに、まったくふさわしいものだと、僕は真剣に思っていたりする。

(あなたの恋愛の中心はなんですか)



■彼氏以外のオトコにも欲情する、そういうオンナが正常なオンナなのだ。

セックスの原動力は性欲にある。当たり前だ。当たり前だが、このことがよくわかっていない人はことのほか多いような気がする。まず、このことから話すことにしよう。

(実は、これについて話すのが一番キケンなところなのだけど)

性欲について、ざっくりと説明してみる。まずは、わかりやすいオスの性欲からだ。

オスの性欲は、原則としてメスに対して「無差別」に発生する。僕たちは、実生活では「かわいいオンナ」とヤリたいと思ってしまうが、それは「文化」の機能のはたらきであって性欲のはたらきではない。性欲のはたらきが原則「無差別」であるから、オトコに対してはフーゾクが発達しうるのだ。一言で言うなら、オトコはオスとして本質的には「誰とでもヤリたい」ということになる。このことは、オトコに罪のあることではない。その性欲の機能は、オトコの意思や個性に関わらず、生まれ持って備わっている機能なのだから責めてもしょうがないところだ。オスはできるだけたくさん遺伝子をばらまこうとする、それはオスの生きものとしての仕事と言っていいだろう。

そして、メスの性欲はというと、これはオスのように「無差別」ではなくなる。複数のオスがいたら、一番優秀なオスとやりたいと思う。要するに一番優秀な遺伝子を受け取ろうとする。これは、メスの生きものとしての仕事だ。だからメスは、目の前にいるオスより優秀なオスが現れると、そちらの遺伝子を受け取ろうとする。このことは動物界を見れば明らかだ。たとえばライオンが、今まさに交尾をしようとしていたところに、別のオスライオンが現れたとする。そしてそこで決闘が行われ、新しいオスが勝てば、メスはその新しいオスの遺伝子を受け取ろうとする。前のオスに操を立てて舌を噛んで死ぬ、というようなことは動物界では起こらない。操を立てる、というのは人間の作り出した「文化」のはたらきであって、性欲とは別のものだからだ。そのように、メスの性欲はオスのそれとは違い「差別的」であって、「より優秀なオス」の遺伝子を受け取ろうとするのだ。

ここまでは、ものすごく当たり前の話だと思う。ところがだ、次のように問いかけてみると、この性欲ということについて理解できていない人がたくさん出てくるのだ。

―――あなたは、彼氏以外のオトコにも欲情しますか?

もちろんこれは、あなたにちゃんとした彼氏がいるという前提での問いかけだ。あなたはどう答えるだろうか? 別に誰にバレるものでもないから、内心では正直に答えてみてほしい。

この問いかけについて、先に話した性欲の仕組みに基づいて答えるならば、当然答えはイエスになるはずだ。しかし、実際にはノーと答える人は多い。「だって、大好きなカレとしか、したくならないもん」と、そう言って一切の思考を停止させてしまう人が思いのほか多いのだ。

そういう人が大多数を占めるとわかっていて、僕はあえて言ってしまおうと思う。彼氏以外のオトコにも欲情する、そういうオンナが正常なオンナなのだ。彼氏にしか欲情しませんというオンナは異常であって、そういうオンナはたいていは彼氏にもちゃんと欲情できていないものだ。

今これを読んでいるオンナは一斉に猛反発している、ような気がする。しかしだ、ここで踏みとどまって、思考停止せずに少し考えてみてほしい。僕はあなたの、カレに対する愛を否定しているのではないし、カレ以外のオトコともやっちゃえと言っているのでもない。

先の話で、僕は性欲ということに合わせて「文化」という言葉を使った。そのことについて、くわしく説明してみる。僕はあなたの「性欲」について話そうとしている。性欲について話すということは、文化をそぎ落として話すということだ。

文化という言葉について、ここでの使い方を説明しておく。人間には本能があるが、本能のままにみんなが生きると何かと具合が悪いため、人間は文化を作り出した。それは世の中の法律や思想や形式やルールとなって、世代を超えて僕たちにまで受け継がれている。ここでいう「文化」とは、本能に対する制約を本質とするものだ。そしてここで話す、「性欲」に相対する「文化」とは、汝姦淫するべからずの戒めであり、一夫一婦制であり、貞操観念ということになる。

ではここで、「彼氏」というのは本能だろうか、それとも文化だろうか? そう考えれば、「彼氏」というのは文化、特に現代の日本人の間で流通している形而上の観念に過ぎないということはわかってくると思う。文化と本能は別モノであるから、彼氏と性欲は別モノになる。このあたりに、僕の主張したいことがある。人によってはどうでもいいことのように聞こえるかもしれないが、ここがカラダでわかっているオンナとわかっていないオンナでは、実際に性欲のはたらきが違うものだ。

本能と文化は分けて考えなくてはならない。だから、あなたというオンナの性欲と、あなたという女性の文化も、やはり分けて考えなくてはならないということになる。そこから言えば、要するにこういうことになるだろう。オンナの性欲の機能は、彼氏以外のオトコにも同様にはたらくのだ。ただし、人間には文化という側面があるため、欲情が顕在化しなかったりすることもあるし、顕在化してもやせ我慢することが出てくる。

ここまで説明して、ここでもう一度あなたに問いかけてみることにする。

―――あなたは、彼氏以外のオトコにも欲情しますか?

あなたはあらためて、どう答えるだろうか?



■オンナが欲情するには、求愛のシグナルを受ける必要がある。

あなたが健康なオンナ、健常なメスであるならば、優秀なオトコには欲情してしまう。それは生きものとして必然の仕組みだ。そこに彼氏がどうこうとか、そういう観念は関係がない。

もちろん実際のこととしては、欲情するといっても実際にヤッちゃうほどかというとそうではなかったりするし、欲情してもスイッチが入らない程度(閾値に達しない程度)ということもあったりするから、優秀なオトコを見るとすぐヌレヌレになるというようなことは起こらない。僕が今話したのは、そういう現場の実際の話ではなく、性欲という仕組みの原則についてのことだ。オンナは彼氏以外のオトコにも欲情する、それが正常、そのことを理屈ででもわかっていたほうが何かと具合がいい。またそのほうが、逆に性欲に足をとられず、間違いを犯すことが少ないとさえ言えるからだ。(間違いの無い人生は退屈だが、またそれは別の話)

さて、性欲の仕組みについて話したところで、そこにもう一つ話を付け足しておきたい。求愛のシグナル、ということについてだ。

生きものには性欲がある。オトコでもオンナでも性欲はある。ただ、その性欲が自覚的なレベルにまで発現するには、ふつうメスの場合は求愛のシグナルを受ける必要がある。そのことについて話すことにする。

(本当は、求愛というのは学術的に専門性のあることなので、僕がここでテキトーに話すのは邪道だ。詳しく知りたい人は専門書をがっつり読みましょう)

求愛とは何か。一番わかりやすいのは、たとえばクジャクが羽を広げるのがそれにあたる。ライオンのオスだけにたてがみがあるように、あの豪奢な羽を持っているのはクジャクのオスだけだ。ついでに言うと、クジャクが求愛をするのは春なので、夏になるとあの羽は抜け落ちる(あ、関係ない話をしてしまった)。クジャクはあの羽を広げて、メスに求愛をする。メスはその求愛を受け取って、オスと交尾するかどうかを判断する。したがい、メスが性欲を発現させるのは求愛を受けてからのことだ。求愛を受けなければ、メスの性欲は沈黙したままになる。

学術的には、人間は雌雄双方が求愛する動物とされている(らしい)のだけれど、そのことはさておいて、ここでは通常オトコがオンナに求愛するものだとしよう。オンナが欲情するには、求愛のシグナルを受ける必要がある。あなたがオンナなら、その性欲はオスの求愛を受けることによって発現する。顕在化するといってもいいだろう。求愛を受けなければ潜在化したまま、性欲はあなたの内部で沈黙を続ける。カンタンに言えば、オンナは口説かれたりカラダに触れられたりしてから性欲を感じ始めるということだ。中にはその手続きなしに欲情するオンナもいるが、たいていそういうオンナは想像力が豊かで、イメージで勝手に求愛を受け取っている。

このあたりは要するに、オンナはオトコとの関わりの中で、どこかでグッときてしまい、そこから欲情が始まるということだ。

この求愛ということも含めて、もう一度先の話に戻ってみる。あなたが、彼氏以外のオトコにも欲情するかどうか。それについて、どうしても感覚としてノーだと思える人は、ひとつ疑ってみる必要があるだろう。あなたは、彼氏以外のオトコから、求愛を受け取っていないのではないだろうかということだ。

彼氏以外から求愛を受け取らないから、彼氏以外には欲情しませんと、そういうことになると話がおかしくなってしまう。彼氏以外から求愛されなければ、欲情しないのは当たり前のことだ。そのあたりに心当たりがある人は、もう一度考え直してもらいたい。僕が先に示した問いかけは、あなたに求愛する彼氏以外のオトコがいたとしての話だ。

ついでに言うと、このことも忘れてはいけない。当たり前だが、あなたに求愛してくるオトコは、当然ステキなオトコでなくてはいけない。彼氏がいようがいまいが、ウーンいまいちと思ってしまう、そんなオトコをイメージしていてはこれも話がおかしくなる。そこは自分として、十分ステキなオトコをイメージすることにしよう。その上で、先の僕の問いかけは有効性を持ってくる。

そのあたりの話を、具体的な一例で言うと、たとえばこんな具合になるだろうか。

<ステージから降りてきた、先ほどまでドラムスティックを驚異的に振り回していたオトコが、首をコキコキと鳴らしながらふとあなたのそばを通り過ぎた。背の高い、痩身のオトコだ。おだやかで、意思のくっきりした目をしている。オトコはバーカウンターで濃い酒を注文して、ふと首だけあなたのほうを振り返った。そこでバチッと、あなたと目が合う。オトコは少し照れくさげに、しかし目を逸らすことはせず、首をかしげる具合の会釈を送ってきた。あなたは照れ笑いと会釈を返した。スタイリッシュに刈上げた短髪は、近くで見ると清潔感のある風貌だった。

オトコはバーテンから酒を受け取ると、しれっとあなたの隣の席に座った。あなたは驚きつつも、すばらしいドラムでした、もうドラムやって長いんですか? ということを社交的に問いかける。オトコは、四歳のころからですよ、子供のころブラジルにいたので、現地のパーカッショニストに混じっていつの間にかドラム叩いてました、と思いがけず丁寧な口調で返してきた。低めの声で、音の輪郭がはっきりした声だ。オトコは無言で乾杯を催促し、あなたは慌ててグラスを合わせる。オトコはニカッと、白い歯を見せて笑い、そこからぐいっとグラスの酒を半分飲んだ。

あなたはオトコと、酒を飲みながら会話をした。それはあなたにとって普段とはまったく違う会話だった。オトコは静かに明るい声で、ブラジルの青い空は、本当に吸い込まれそうに青いんです、自分がドラムをたたく原点はそこにありますけれど、誰にとっても原点ってそういうもんじゃないですか、というようなことを無邪気な熱を込めて話した。ところどころに混ざるジェスチュアが、オトコに少年めいた印象を与える。

酒を飲み交わす中で、あなたは彼の指にタコが出来ているのを発見した。ドラムダコですよ、と言って彼はあなたに自分の左手を差し出してきた。あなたはなんとなく、そのタコを指でこすってみる。たくましい感触だ。あなたはぼんやりと、そのタコをこすり続けた。オトコはつぶやくように、きれいな手をしてますね、とあなたに言った。今度はオトコの親指が、あなたの手の甲をやさしくこすり始める。握手する形で、やさしく手のひらと手のひらが重なっている。アナスイの香水ですね、とオトコはあなたのトワレを嗅ぎ分けた。香水も似合ってますし、そのブラウス、ヴィクトリアンも似合ってますね、とオトコはおだやかな笑顔を見せた。

キレのいいオルガンが流れ初めて、次のステージが始まる気配。オトコはずっとあなたの手の甲を親指でさすりながら、なんだか久しぶりに女性と長話をしましたよ、不思議だ、と言った。そうなんですか? とあなたが意外そうに問うと、あなたが何だか話しやすそうな人だったから、とオトコははにかみながら言った。そしてオトコは、ふいにあなたの耳元に口を寄せる。あなたはドキリとしながらも、抵抗せずオトコの声を聞いた。視界に、オトコの二の腕がある。その引き締まった筋肉の隆起には、一枚の羽と、Ca cle Azul no Brazil という一文のタトゥがあった。

―――大きな声では言えないんですが、このあとも麻布でライブがあります。車で来ていますので、もしよければ、あなたを連れて行っていいですか? 突然で失礼かと思うんですが、どうしても、もう少しあなたとお話がしたいんです。

オトコは真剣な声でそう言い残して、あなたの肩をやさしく叩いて立ち上がった。ライトに逆光の中、オトコはステージに向かって歩いていく。オトコは歩きながら、ジーンズの後ろに差し込んであったドラムスティックを抜き取った。オトコの手の中でスティックはくるくると二回転し、ピシッと正しい位置で止まった。>

例を挙げるにしては長くなりすぎた。さて、こういう例があなたの趣味に合わないとアレなのだが、ある程度趣味に合ったとして、こういうシチュエーションであなたが欲情するかしないかが問題だ。さらに言えば、こういうオトコがライブを終えたあと、終電の無くなった麻布の路上であなたを抱き寄せて、あなたは本当に素敵な人だ、そうこぼしてあなたの首筋にやさしいキスをしたとして、そのときのあなたのカラダがシーンとしているかどうかが問題なのだ。そこでシーンとする人は、本当に欲情しないのだと思う。思うが、そういう人と僕はなんとなく仲良くなれないような気がする。

オンナは、ステキなオトコに欲情する。ステキなオトコから求愛を受け取ると、彼氏がどうこうを無視して欲情する。それが、性欲という機能の本来的なはたらきだ。何度も言うが、彼氏以外のオトコにも欲情してしまう、それが性欲の機能を死なせていない、健康で正常なオンナなのだ。

ただし僕は、だから欲情したらヤッちゃえと、そんなことを言っているのでは決して無い。欲情してもヤッてはいけませんと、その抑制がかかるのは文化のはたらきなのだが、僕はその文化が無意味で無価値だとは決して言っていない。

文化には、文化のきらめきがある。だから、欲情してもあえてガマンする、そして文化をまっとうする、彼氏だけに抱かれるオンナでい続ける、それはそれですばらしいことだと思う。もちろんその逆に、欲情してしまったらそれには逆らわない、生きものとしての自分をまっとうする、そのことにもきらめきはあると思う。要するに、実際にヤるヤラない、そのことに僕は口出しをするつもりは無いのだ。(僕はそもそも、人の下半身の流儀については口出しをしない主義だ)

ただ僕は、「彼氏以外のオトコには欲情しません」と、そう決め付けているオンナに対して警告したいと思っている。その決め付けは、あなたの中の性欲の機能を死なせる決め付けだ。それによってあなたの中の性欲が死んだとしたらどうなるか? あなたは浮気をしないかもしれないが、肝心の彼氏にも欲情できなくなってしまうということだ。

はっきり言ってしまおう。「性欲の機能を死なせている」オンナが、実際にたくさんいる。本人は、彼氏とはヤリたくなるので性欲はありますと、そう思い込んでいるのだが、それは勘違いで、実はすっかり性欲の機能を死なせてしまっているのだ。

性欲の機能を死なせているオンナは、彼氏にだけ欲情しているつもりだが、その欲情がほのぼのとしていること、またぼんやりとしていることに気がついていない。そのくぐもった欲情は、やがて彼氏を萎えさせて、いつかは別れの理由になったりもする。

あなたの中の性欲の機能は、死んでいないだろうか。いきいきとして、あなたを突き動かしているだろうか。あなたは彼氏という「オトコ」に欲情しているだろうか。ただ「彼とエッチしたい」という「気分」になっているだけだったりしないだろうか。

もう少し、この話を続ける。

(オトコとして欲情されない彼氏は、オトコとしてかなり気の毒な状況にいることになる)



■オトコとのセックスをオヤツにしてはいけない。

セックスの原動力は性欲にある、と言った。これは当たり前のことなのだが、ここには実は落とし穴がある。このことを説明するのに、一つ別の角度から考えることにしよう。

僕たちには食欲がある。食欲も本能のひとつだ。食欲があるから食事もするわけで、このことは今生きている人なら誰でも知っていることのはずだ。

しかし、ここでこう考えてみたらどうだろう。あなたには、食欲以外の理由で食事をする、これを食べたいと感じる、そういう経験は無いだろうか? もう満腹だが、食欲とは別に食べたいと感じる衝動だ。オンナのコなら、きっと誰でもその衝動を知っているし、いつもその衝動と戦っていることだろう。一日の必要カロリーはもう摂取した、それはわかっているけどまだ食べたい、そういうことが誰にでもあるはずだ。

人間には食欲がある。食欲によって食事もするわけだが、必ずしも食事は食欲に基づくとは限らないということだ。食欲を離れて食べたいと感じる衝動、それをここでは「食べたい欲」と呼ぶことにしよう。あなたには食欲とは別に「食べたい欲」があり、それによって食事をすることがある。そして、レストランで食事を終えた直後なのに、ふと見かけたクレープ屋に吸い込まれて、生クリームストロベリーなどをがっつり食べてしまったりするのだ。

それと同じことが、性欲にもある。人間は、性欲以外の理由でセックスをすることがあるのだ。それはいわば「ヤリたい欲」ということになる。おなかは空いていないけど、イチゴの酸味と生クリームの甘みが溶け合う味を口の中に満たしこんで飲み込みたい、そういう「食べたい欲」があるのと同様に、欲情はしていないけど、彼とハダカになって気持ちいいところを触りあって名前を呼び合いながら抱き合いたい、そういう「ヤリたい欲」が人間にはある。

(こんなこと話してると、なんだかヤリたくなってきたな)

(あ、ヘンなこと言ってすいません)

僕は決して、その「ヤリたい欲」を否定するわけではない。僕自身、そのヤリたい欲はあるし、むしろヤリたい欲が常時満載の人間なのだから、そんなことを否定するつもりは毛頭無い。

ただ、「彼氏としかヤリたいと思いません」と、そう言うオンナの中には、その「ヤリたい欲」しか持っていないオンナがけっこういるのだ。この「ヤリたい欲」は、性欲が機能不全を起こしていても発生するわけなのだが、この「ヤリたい欲」を健全な性欲と勘違いして、そのことに無頓着なオンナがいる。僕はそういうオンナに警告したいと思っている。あなたは健常な状態ではない。本能としての性欲のほとばしりがなく、大脳新皮質からつむぎだされる「ヤリたい欲」しかないのだ。だから僕はしつこいまでに、彼氏以外のオトコにも欲情するオンナが正常だと、挑発的なことを繰り返して言っている。

あなたは、生クリームとスナックだけで、健康体を保てるだろうか。あなたの「食べたい欲」がそういうものに向けられるものだとしても、それとは別に正常な食欲が機能していなければ健康体は保てないだろう。それと同じように、オトコとオンナの関係は「ヤリたい欲」だけでは健康を保てない。それとは別に、正常な性欲が機能していなければならないのだ。あなたが彼氏に、「ヤリたい欲」だけを向けてそれを性欲だと思い込んでいると、やがてあなたと彼の関係は不健康になっていく。不健康というのは、病気ではないが元気が出ない、おっくうだというような状態だ。それはまず、彼のほうにあなたを抱きたいという気持ちが失せていくという形で始まる。それが始まってしまうのは、あなたの性欲の機能が死んでいるからだ。性欲が拍動していないオンナは、そのセックスのテンションが低くなる。オンナのテンションが下がると、オトコはヤル気を失っていくのだ。

オヤツを食事にしてはいけないように、オトコとのセックスをオヤツにしてはいけない。満たさないと死んでしまう、そういう性欲のほとばしりの中にいるオンナだからこそ、オトコはあなたを抱きたいと真剣に思うようになるのだ。

あなたの中の性欲という本能は、活発に、ほとばしっているだろうか?

(そういうオンナに求められてこそ、彼氏はオトコとして充実できるだろう)



■恍惚の中であなたが感じる呆然とした満足感、その切なさを、僕たちは恋愛と呼んでいる。

性欲について、長々と話してきた。セックスに関わる話はどうしても長くなる。あなたにとって、いくらかでも発見はあっただろうか。発見があればうれしいし、それによってあなたが性欲の活発なオンナになればさらにうれしい。

性欲について理解したとしても、それを自分のカラダとして実現できるかどうかは別のことだ。性欲というのは本能のことだから、アタマで理解したとしてもすぐにはあなた自身に反映されない。実現のためには、いろんな経験が要るし、センスもいるし、また運や環境も要る。バーベキューで焼肉を食べると妙においしく感じるものだが、それは屋外で本能が活性化しているから、要するに食欲が本来性を取り戻しているからで、それと同じような体験が性欲についても必要だったりするのだ。そこをどうやって体験して知っていくかは、一概に方法を示せるものではないだろう。

そのバーベキューの話と同様に、性欲の機能が活発化し本来性を取り戻すと、セックスはとても気持ちよくなる。これは精神論のことではなく、具体的に気持ちよくなるのだ。恍惚度が全然違うし、集中力も違う。ときには、今までセックスでいくことのなかったオンナが、三回四回と立て続けにいったりすることもあるのだ。そのときにあなたは、恋愛とセックスの関係に本当に触れることになる。またそのときには、恋愛の中心にセックスがあるということ、恋愛とはセックスとその手続きのことだと、そのあたりのことにも半分うなずくようになっているかもしれない。

ところで現時点で、性欲が本来性を保っているオンナというのは世の中にどれぐらいいるものなのだろう。統計の取りようがないが、それは相当少ないんじゃないかという気がする。そもそも、純粋な性欲を体験したことの無いオンナのほうが多いような気がするし、性欲という単語自体になんとなく目をそむけるオンナのほうが多いんじゃないかとさえ思えてくる。

少し身近な話に戻るが、性欲ということ自体に、いかがわしいものというかハレンチなものというか、そういうマイナスイメージを持つ人が多いのはなぜなんだろう。オンナが性欲を持っていると引かれたりしませんか? と、そういう質問のメールを受け取ったりすることもあるが、なぜこんな情報化の時代にそんな風潮が残っているのだろう。性欲はそんな、いかがわしいようなものでは決してない。僕なんかは、性欲が人間にとって一番パワフルですがすがしく気持ちのいい本能だと思っているし、まして性欲が活発なオンナのコなんてかわいくてしょうがないとさえ思ってしまうぐらいだ。だから、性欲がイケナイものだと思い込んでいるような人がいたら、まずは即刻その思い込みを破棄すべきだ。あなたがコアなキリスト教徒でなければ、性欲はいきいきとしていていいのだ。そのほうがお肌はツヤツヤになるし、オトコも自然に吸い寄せられてくる。僕はまったく不道徳な人間だから、汝姦淫するべし、と言いたいぐらいだ。

ただし、性欲がいかに気持ちのいいものであっても、そこにはマナーというものが存在する。食事のマナーの無い人がみっともない人であるように、性欲とセックスのマナーが無い人は大変みっともない人になる。とくに性欲というのは食欲に比べて歪みやすく、歪んでもパワフルはパワフルなので、そのときにはみっともないどころか近所迷惑になる。極端なところで言えばストーカーとか童女性愛とかがそれにあたるが、そうなるともう狂気である。これを読んでいる人の中にそんな狂気の人はいないと思うが、そこまでいかないにしても、性欲についてみっともなくない扱い方、洗練された扱い方というのを忘れてはいけないだろう。性欲が活発といっても、空腹でおなかがグーグー鳴るような性欲はあまりよろしくないし、会話もせずにパスタをズーズー吸い込むような食事の仕方はやっぱりよろしくないことになる。

性欲のマナー。それもオンナとしての性欲のマナーは、いかにあるべきか。これはまた、話が長くなってしまいそうだ。あまり興味の引ける話でもなさそうなので、カンタンに話しておくにとどめることにする。オンナとして性欲をアピールするときは、オトコの服の裾をグッと掴んで、目で訴えかければそれで十分だ。抱いて、と言ってしまってもいい。お互いのキャラによっては、ヤッて、でも悪くないだろう。あなたの性欲が元気いっぱいの状態なら、性欲のアピールはそれで十分伝わる。逆に言うと、今日はエッチしないのー? とか、そういう意味不明のアピールはあまりよろしくない。うっとおしいと思われる可能性が大だ。むしろ、そこまで強制的なアピールをしなくてはいけない状態なら、すでにお互いの関係が不健康になっているんじゃないかとそのことから考えていく必要があるだろう。あと気をつけるべきは、友達と話しているとき。セックスってさぁ、とダミ声で話していると、そのときの調子は必ずあなたに染み付いていく。彼がヤッてくんないんだよと、そう大声で話しているうちに、あなたの性欲はオヤジくさいものになっていってしまうだろう。

そういうことに気をつけて、あとは性欲を正しくいきいきと保っていれば、それだけで大丈夫だ。あなたは自然に恋愛の中心たるセックスに向かっていくだろう。

(ああ、なんてフツーの結論なのだろう)

健常な状態であれば、性欲というのは、圧倒的に切なくすがすがしく、またほとばしるように強いものだ。性欲のスイッチが入った状態は、それだけで一つの快楽とさえ言いうるものだと思う。オトコもオンナも、相手とつながりたくてどうしようもなくなるのだ。そういう状態は、やはり若いうち、遊びでもスポーツでも仕事でも、あるいは勉強でも読書でも映画鑑賞でも、なんでもいいからとにかく興奮しながらやりまくった後に発生する。要するに、人間として全体が活性化していく中で、性欲も活性化していくのだ。

今これを書いているのは七月の中旬だが、これから本格的に夏がやってくる。性欲の旬は夏にあるから、これからが誰にとってもお楽しみの季節ということになるだろう。夏だから当然、あなたは水着を着て海で泳いだりすると思う。よく遊んでよく食べて、暮れなずむころにはビールなんか飲んで、そのままオトコのひざにアタマを乗せて少し休憩などするのがステキだ。視界にはオレンジ色に光る海があって、雑音は波音が全て消してくれたりして、疲れたカラダにまぶたが少し重たい、そういう状態がベストになる。そういうときに、ふと彼の指先があなたの首筋に触れると、自分でも驚くぐらいジンジンと感じてしまうことがあるものだ。その日の夜、あなたはもう彼に抱かれなくては胸が張り裂けそうだと、そういう純粋な性欲を体験することになるだろう。

純粋な性欲がほとばしる中、お互いをむさぼりあって、自我が消し飛びそうな中、ちんちんとおまんこの結合だけに神経が集中する、そしてその集中が爆発するときには、二人の結合だけが真実になる。それを一晩中繰り返して、二人とも気を失うようにして眠る。そして、あなたが目を覚ますと、おまんこにはまだ痺れる感覚が残っていて、早朝の光がカーテンを青く光らせていて、あなたの隣には彼が安らかな寝息を立てていて、あなたはそれを見てうっとりと深いため息をつく。その、恍惚の中であなたが感じる呆然とした満足感、その切なさを、僕たちは恋愛と呼んでいる。

恋愛の中心にはセックスがあり、そのセックスがあなたの恋愛の全体を光らせているのだ。

僕はあなたの恋愛が、そのようであればいいなと思っている。

あなたはどう思うだろうか?

じゃあ、今回はこんなところで。

またね。


→その2へ続く(※現在準備中)


→九折さんにアンケートを送ってあげる
→九折さんにメールしてあげる




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