恋愛相談のコラム









束縛してしまう、あなたへ







束縛ってのは、いいことじゃない。本当は、束縛なんてすることなく、気づいたらお互いがお互いを一番大事にしている、そういう状態がいい。自然に、一日一度は電話してしまう。自然に、コンパなんてものには興味がなくなる。そういう状態が、本当はいいんだ。

もちろんそのほうがいいってことは、あなたも知っているのだ。でも、そうならないから、形式だけでもそうなってほしくて、彼をコントロールしようとする。それが、束縛というやつだ。

さらに厳しいことを言ってしまうなら、束縛ぐせのあるあなたは、束縛っていけないことなんですかね?といいながら、結局のところは、誰にどういわれても、束縛することをやめようとはしないのだ。正確に言うと、あなたはやめられないのだ。あなたは自分の意思で彼を束縛しているというより、何かに駆り立てられて、また何かにおびえて、彼を束縛しているのだ。だから、束縛する正当な理由がほしくて、あなたは他人にコメントを求めたり、あるいは露骨な束縛を薄める方法を尋ねたりする。

彼を束縛する感情、彼にこうあってほしいと思う感情は、強烈だ。たくさんの人が、その強烈な感情に、抗しえない。そして、その感情を疑う意欲すら失ってしまう。

でも、それもいいかげんにしよう。あなたに大切な人がいて、その人と愛のある歴史を刻んで生きたいと思うなら、もういいかげんにしなくちゃいけないのだ。彼を束縛したくなる感情、それを疑おう。それを乗り越えたとき、あなたは迫力のある人間になる。

そのためには、まず、恋愛というものを見直さなくちゃいけない。まずあなたは、恋愛に純粋さを求めすぎだ。世の中のすばらしいもの全て俯瞰して、はたして純粋なものがあったか、それをもう一度確認してほしい。池には苔が生える。塩にはにがりが混じっている。四季にはさびしい冬があり、日の光には紫外線が含まれる。そのたとえで言えば、あなたの求めている恋愛は、精製された純水や、100%の塩化ナトリウムといったところだ。世界全体からみれば、実はそういう純粋なものこそまがいものだってことが、わかるとおもう。

恋愛にも雑草が生えるし、さびしい季節がある。だから彼が他の女性のミニスカートを気にすることもあるし、彼の態度が冷たいときもある。この当たり前のことを、ちゃんと腹に据えておこう。そんなことは、ほんとうに瑣末なことなんだから。

世の中には、男女の愛を歌った曲が氾濫して、若い男女は恋愛真理教になってしまった。たしかに、恋愛には、本当に純粋といえる至高の瞬間があって、その快感はなにものにも代えがたいものだ。だけどそれは、ある瞬間を切り取ったワンショットでしかない。苔が生えたからもうこの恋愛はまがいもの、そういう恋愛観は、今日で終わりにしよう。

あなたは一方で、わたしがこんなに気持ちを費やしているのに、彼は私に気持ちをむけてくれない、そう感じるがゆえに、束縛をしているかもしれない。その気持ちも、よくわかる。電話をかけるのもあなたのほう、ベッドで頑張るのもあなたのほう。あなたは、ミジメな気持ちになるだろう。だから、彼に愛を演じさせるため、あなたは彼をコントロールしようとする。

あなたは彼に、自分の気持ちを伝えていい。彼の態度があなたを苦しめているのなら、そのことを伝えればいい。なぜなら、彼は完璧な人じゃない。言葉に出されて女性の気持ちを知ることもあるし、自分が横着していたことに気づくこともある。

でもそれも、ある前提の上においてだ。あなたは、彼の気持ちをコントロールできない。そんなことは、誰にも許されていない。鞭に打たれて死ぬまで働いた奴隷達でも、自分が本心で誰を好きになるか、その自由だけは持っていた。それは、人間の犯すことのできない自由で、それをコントロールしようとするあなたは、要するに彼を洗脳したがっているということだ。決して、僕がひどいことをいってるんじゃない。あなたが、ひどいことをしているのだ。

あなたが、あなたの苦しみを彼に伝えたとして、彼が自分を改めるかどうかはわからない。彼があなたのメールに返信せず、そのことがあなたをいかに苦しめたかを彼に伝えたとしても、彼が心から反省するかどうかはわからない。もちろん、あなたが強力な圧力を加えれば、彼はストレスに負けて、その場しのぎの対応をするだろう。だがあなたは、彼にいやいやメールの返信をしてほしいわけじゃないはずだ。彼が自分の横着でどれだけあなたを傷つけたかに気づき、反省と共に、自分を改める。そうあってほしいと思っているはずだ。であれば、あなたはそれをコントロールすることはできない。彼の本心は、彼のものだからだ。

あなたは、彼の気持ちをコントロールできない。その前提において、あなたはあなたの気持ちを、あますところなく伝えればいい。それでも彼が改まらない場合は、彼は人の心を思いやることができない幼稚な人間か、あなたのことなどどうでもいいと考えている、冷たい人間なのだ。あなたがその彼を受け入れられず、愛のある彼にしたてようとしたとき、あなたは束縛する人となる。

ところであなたは、彼から純粋に愛されることを望むとき、その「理由」はなんだろうか。これはにわかには、答えられないだろう。愛されたい「理由」。それは、言い出すともう言葉遊びみたいなものになってくる。じゃあ逆に、あなたが彼に愛されなかったら、あなたはどうなるのだろう。あなたは何を失うのだろう。それも、あまり明確じゃない。でもあなたは、彼のあなたに対する愛が曇ったとき、非常な危機感にさらされる。そのことの正体も、見極めなくちゃならない。

あなたは実は、彼に純粋な愛を向けられているということに、自分の存在理由を見出しているのだ。だから、それが曇ったとき、あなたは自分の存在そのものが曇るような恐怖にとらわれる。だからあなたは彼を束縛して、その曇りを感じさせる彼の行動を阻止しようとする。

自分の存在する理由という感覚、アイデンティティーを、彼に丸投げしてはいけない。愛のために生きるというのは一つの真実ではあるけど、それは彼に自分の存在理由について依存することとは違う。あなたは一人では自分の存在する価値がつかめず、その不安から逃れるために、彼にその安心感を提供してもらおうとしている。

それも、そろそろおしまいにしよう。あなたが何のために生きているかということ、それはあなたが掴み取らなくてはいけない。もちろん、それは手に入れるのが一番むつかしいものだ。だけど、その一番むつかしいものを、彼におまかせするという方法は反省の余地があるんじゃないか。

勉強でも仕事でも趣味でもなんでもいいから、自分のアイデンティティー、それを掴み取る努力をしよう。それでこそ、あなたは依存心の混じらない、さわやかな恋愛ができる。もちろん、彼とのことも、あなたのアイデンティティーの「一部」にはなる、またそうであるほうがステキだとは思っているけど。

さて、色々いったけど、ここまでいえば、僕の言わんとすることがわかってもらえるだろうと思う。束縛ってなんなのか。それは、全部自分の弱さと未熟さの露呈といっていいだろう。恋愛に過剰な純粋さを求めて、また彼の気持ちは彼のものであるということが受け入れられず、最後は自分の存在理由すら彼におまかせしてしまう。その弱さと未熟さが克服されないかぎり、束縛はだめなんですかね、やめたほうがいいんですかねと誰に相談したとしても、無意味だ。本当に恋愛について考え直して、100%純粋じゃないものなんだってことを、自分の恋愛観の中にちゃんと消化しよう。彼の気持ちは彼のものなんだってことも、受け入れよう。そして、自分が存在する理由についてもじっくり考えて、全てを彼に依存することはやめよう。

僕は決して、恋愛についてニヒリズムに類することは言っていない。恋愛なんてこんなもんさ、なんてことは言っていないのだ。恋愛ってのは純粋なものではなくて、またこちらがどんなに想っても想ってもらえないことはあるのであって、さらに自分の存在理由にまではならないものだけど、それでも、ただその人を好きになり、大事に思う瞬間ってのはあるものなんだ。そして、あなたがそう思われることも、あるってわけだ。その機会は、あなたにも必ずある。

ここに書いてあるいくつかのことが実現できれば、あなたは迫力のある人になって、深みのある恋愛ができるようになってくる。今はにわかに信じられなくても、どこかアタマのはしっこに、覚えていてくれればいい。機会が、必ずあなたにもくるから。







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