ルサンチマン
ルサンチマン、という便利な言葉がある。弱者が強者に対して抱く恨みやねたみ、憎悪のことを意味する。思想などで頻出する言葉で、例えば「政治家に対する蔑視は、正当なものと、ルサンチマンによるものとがある」というふうにつかう。
ルサンチマンは、あまりいいものではない。人間のもつ、わるい感情パターンを示す言葉だ。例えばイチローが過去の恋人ともめたらスキャンダルになるし、広末がタバコを吸うとメタメタに叩かれる。それらはとても単純なルサンチマンだ。
あなたが今もっている、いろいろな感情や衝動、意見など、それらは、ルサンチマンではないだろうか。
「あいつらの恋愛はウソだよ」
「高学歴ほどクズだ」
「真面目に仕事なんかする奴はバカだ」
「あいつらは分かっていない」
「そんなことどうでもいいよ」
「ウラではどうだか」
「バカみたい」
「これおいしくない」
「これおもしろくない」
「どこがいいのこんなの」
人間は容易にルサンチマンに陥る。それは本当に要注意だ。あいつらをバカにしかえすために勉強する、あいつらを軽蔑するために修行する、あいつを見下すために恋人を手に入れたい、あいつをあざけるためにアドバイスのふりをした冷たい言葉をたたきつける、あいつを引きずり落とすために悪いところばかりをさがす、あいつらを軽蔑するためにあの人を賞賛する、そういうことはしょっちゅうあることだ。
だが、ルサンチマンにもとづく行動には、くだけた笑顔が伴わない。なにやらせっぱ詰まったムードがただよっている。
自分の中のルサンチマンを克服し、高潔な気持ちにもとづいて、生きようではないか。
「あいつらの恋愛はウソだよ、まだ今はね」
「高学歴ほどクズだ、だからみんながんばるんだよな」
「真面目に仕事なんかする奴はバカだ、けどステキだ」
「あいつらは分かっていない、けどいい奴らだ」
「そんなことどうでもいいよ、もっと大事な話を聞かせてくれ」
「ウラではどうだか、でもすばらしいオモテをもっているよな」
「バカみたい、逆に尊敬するよ」
「これおいしくない、もったいないよな」
「これおもしろくない、苦手だな」
「どこがいいのこんなの、そのヒミツを聞かせてくれ」
[ルサンチマン/了]