恋愛相談のコラム









バージンの抱き方、抱かれ方




文学部の図書館は、建て増しによってややこしい構造をなしていた文学部の学舎全体の中に、ひっそりとうずもれるような形で、藤の蔦にからまれて古めかしく建っていた。その立地とたたずまいにあわせて、開架に並べられた書籍が、他の学部のものと比較してかなり一般性の無い、好奇心から手をとろうにも厚表紙の装丁とそこに書かれたタイトルの書体が荘重すぎるものばかりだということで、文学部の図書館は試験前を除いては人もまばら、また人がいたにしても、キャンパス・ライフといったイメージの勢いの良さや騒々しさからは無縁というふうの空間であった。僕はいくらか、ここに入り浸っているようではやがて僕の人格自体が閑散となってしまう、いわゆるネクラの方向へと知らず知らずのうちに導かれてしまうのではないか、と苦笑めいて自覚していたのだったが、それでも僕は文学部の図書館の二階、英書のペーパー・バックが詰め込まれた書棚を背にして太いケヤキを窓の向こうにみる席で、本を読むのが好きなのは事実であった。その窓を、自分のためにだけ少し開ける、そしてそこから吹き込む初夏に向かおうとする風を肺の奥に吸い込む、そのようにしながら、僕はフロイトの全集を読むことでその四月の末を過ごしたのである。

僕として、その図書館の、僕が思うところの「勇気付けられる席」でフロイトの全集を読んでいたことの記憶が、十年近くを経た今になっても奇妙な明瞭さで残っているのは、そのフロイトの提示する理論が当時の僕にとって衝撃的なものであったということもあるわけだが、それとは別のこととして、その場所で受け取ったクラス・メートからの一通のメールがあり、その内容の哀しさによって、その時間と空間が僕の記憶に忘れがたきものとして刻み込まれたのでもあるようである。長話をしたことはあるが、取り立てて僕と仲が深いというわけでもないクラス・メート、その彼女から送られてきた携帯メールは、次のようなものであった。

―――彼と、別れることになりました。なんだかごめんね、この間さんざん話を聞いてもらって、いろいろ教えてもらったのに、こんな結果になってしまって・・・。

僕はそのメールを、窓から吹き込むまだ遠慮のある暖かさの、それでいて生命力の瀰漫を感じさせる風を浴びながら、おそらくはそれによって一層哀しみを引き立てられる具合にして、二度三度と読み返したのである。僕は当然の進みゆきで、―――なぜ、やっぱり別れるしかなかったのかい?と彼女に問いかける返信を送った。もちろん、彼女の決定を尊重するということ、僕としてそこに口出しするのは差出口であるという認識を持ってはいると、文章全体から彼女が感じうるように工夫を凝らした上で。

それに対する彼女の返信は簡素で、およそごまかしのない、またそれだけに切実な内容のものであった。

―――やっぱり、彼とのエッチが辛すぎたの。そのことで、最近はケンカばかりだったし・・・。

そのメールによるまでもなく、人気の無くなった夜の学生食堂で交わした、かつての彼女と僕との長話、そのほとんどは彼女からの思いがけぬピンチの吐露であったわけだが、その長話の内容の詳細を僕はすでにかなりの範囲で思い出していた。傍目に見る限りは、身なりも振舞いもこなれたふうで、世渡りなり人付き合いなりの要領を得ている、さらにその外見のレベルに相応しい蠱惑的なところさえ既に身につけていた彼女は、その印象とは裏腹に、新しく出来た彼氏をその相手として、つい先日にバージンを捨てた(捨てた、という彼女の表現に僕はドキリとさせられたのでもある)ところなのだということだった。彼女いわくは、そのロスト・バージンの夜は期待したような甘やかなものではなく、それどころか苦渋に満ちたものでさえあったということである。

―――超痛かった!痛いばかりだった!あんまりに痛くて、気を失いそうだったよ!しかも彼、あたしが痛いって泣いてるのに、聞いてるのか聞いてないのか、いきなり激しく動くんだもん!

僕は彼女の、その誰かにぶつけずにはいられないという、やりきれぬ不安と怒り、哀しみと性愛の入り混じった調子の言葉を受けて、当然の同情はするとともに、彼女は今まさに女として生きていくことに体当たりしているのだというような印象を受けて、彼女をまぶしく感じもしたものだった。一方では、彼女がこぼす具合に言ったことについて、先行きの暗さに具体的な不安を僕としては感じてもいたのだったが・・・。

―――これから、どうしよう?どうすればいい?彼、やる気マンマンだし、痛いのは一回目だけだって、なぜか知らないけど思い込んでるみたいなのね。あたしには到底、そうは思えないんだけど・・・。あたしさ、一回目は勢いでがんばったけど、正直、二回目はもうイヤよ。あんなに痛いなんて、想像もしてなかったし、もっとやさしくしてくれるものかと思ったら、そうでもなかったし。それにね、こんなことバラしてしまうのもどうかと思うけど、あの、彼のを口でするやつ?あれも、正直キツいのよ。まだ、慣れてもないし、口に含みこんだら、どうしようもなくウエッてなるの・・・。


***


セックス(性行為としての)のこと。一部の人たちにとっては、セックスは恋愛における闇の一面としてとらえられる―――肉欲、と蔑む具合に―――こともあるようだが、僕にとってはそうではない、僕として感じるところでいえば、セックスは恋愛における一番切ないシーンであり、夜に密室で行うものとして派手なものではないけれども、それだけに秘めやかに光るシーンである。また当然に、セックスが充実しない、あるいはセックスの面で反りが合わないということで、恋愛関係そのものが破綻することも自然なこととしてありうると、僕には自明のこととして感じられる。

男女がそれぞれに思春期を経て、初めてセックスをするというときは、女性の側にはただならぬ痛みが伴うということも合わせて、なんと文学的なワンシーンだろうと僕は胸を打たれる具合に感じる。男性側には、確かに性衝動があけすけに見えてしまうところもあるから、そこは僕として自分のことも含めて肩をすくめて笑いたくなる部分もあるけれども、女性側にとってはまったくそのように茶化すべき部分は微塵も無い、まったく切なさに満ちたシーンだ。それがたとえ、不倫であろうが売春であろうが、そのことを超越するほどに・・・。

しかし実際のこととして、先に示した話にもあるように、女性として初体験になるそのセックスが、当の女性の期待したものと大きくかけ離れる、それによって傷心するということがあるようである。それも僕が耳にするだけでも、かなりの割合で実際にあることのようだ。それによって、自分は今いわゆるセカンド・バージンという状態なの、と告白する女性も、僕は幾度か直接目にしている。

ロスト・バージンという、女性にとってやはり一生に一度しかないシーンで、そのように女性が傷心するというのはなんと残念なことであろうか。人間が生きていく上のことであるから、それはもちろん全ての記憶が楽しく美しいものばかりになるわけはないにしても、そのようなシーンだけは、世界中の全ての女性が、美しい記憶となりうる一夜を希望するもの、そしてまた、それはなんとしても満たされるべき希望というものではないだろうか。そのことについて考えると、僕のようながさつな人間でさえ、下唇を噛み締めたくなったりもするのだけれども・・・。

僕として今回、ロスト・バージンの夜はどのようになるべきであるか、そのことについて具体的に、それも極めて具体的に、話してみたいと思う。具体的にというのは、要するにそのただならぬ緊張や痛みをどのように緩和して、その肉体的結合を出来る限り残酷ならざるものにしてゆけるか、と考えることになるだろう。

あなたが女性の側として、基本的には彼から求められる、そしてその希求をどのように受け入れていくかと考えていく立場にあるとしても、いくらかはあなたの側で、そのロスト・バージンのシーンの形をデザインしていくこともできるかと思う。あるべきロスト・バージンの、具体的な話を僕としてする、それによって、あなたを悩ませているおそらくは若すぎる彼と、これからうまく寄り添いながら、その夜に至れるようにと祈って。


***


またしても前置きが長くなってしまった。ここからは、いくらか卑猥な話にもなるので、散文的に簡潔に話そうかと思う。さてさて、ロスト・バージンの夜は、どのように執り行われるべきか。それを、いくつかトピックを並べる具合に話すとして・・・。


・ロスト・バージンは、セックスというよりは「オペ」に近い。

まず、このこと。ここでいう「オペ」とは、医療の外科手術としての「オペ」だ。

ロスト・バージンは、「オペ」の雰囲気になる。これはぶっちゃけた話、僕として実際に経験してきたことを、率直にまとめて言い表したものだ。バージンの女を抱くときというのは、彼女はベッドに寝転んで気をつけの体勢、筋肉は強張ってガチガチという状態である。さてその彼女のヴァギナにどうやって挿入するのだ、ひとしきり愛撫をしてみたものの、感じるというほどには感じてくれないし、濡れるというほどには濡れてくれない・・・。これはどうやら、方法というか、「術式」を新たに考えなくてはならない。ロスト・バージンのベッドの上は、実際そのようなものである。

これは僕として、茶化したり皮肉ったりするつもりで、このように言っているのではない。エロ本やレディコミに描かれているような、スムースで演劇のような、バラ園の背景に痛みの涙が甘露というような印象の、そのロスト・バージンのシーンの思い入れを捨てろということを、僕はまず初めに言いたいのである。どうせあなたは、ベッドの上で「うっとり」するだけの、気持ちの余裕など全然持てないのだから。

現実のロスト・バージンは、もっと生々しいものだ。その分、もっと切ないものでもあるけれど。

目を閉じて身体を強張らせているあなたに、彼がふと笑いかけるような調子で、

「がちがちだね。これは、軽く麻酔をかけないとムリだよ」

とあなたに言う。あなたはそれを受けて、小さく笑い、小さく身体の力を抜く。彼はあなたに微笑みかけている。

「じゃ、オペを再開するよ。えー、痛かったら言ってくださいね」

彼はわかりやすく歯医者を模した口調でそのように言い、あなたは頷く。彼は愛撫を続けながら、ここはどうですか、痛くないですか、と先の口調のまま冗談めかして言う。あなたはつい声を漏らして笑い、笑わせないでよ、と言って彼にしがみつく。あなたは内心で、少しやわらかくなった自分の身体と心を確認する。

そのようであればいいと思うのだ。

初めてのときのベッドは、オペのような、野暮ったく間抜けなシーンになる。そのことを、あなたと彼とで了解しあってから、笑顔でベッドに望もう。


・ロスト・バージンには3ラウンド必要。

彼と初めて、ラブホテルに行く。彼の前で初めて裸になり、また男の愛撫を初めて受け入れてみる。そして、彼のペニスを、初めてのものとしてヴァギナに受け入れてみる。彼が果てた後は、二人で溶けてくっついてしまったように、抱きしめあって眠る・・・。

このようなことは、まあまずうまく行かない。なぜかというと、これはある程度個人差のあることとはいえ、基本的には彼の前で裸になった時点であなたは既に緊張の頂点で、もはやそこから先は何もする余力が残っていないからだ。

初めてホテルに行ったその日に、いきなり最後まで行こうとするのはやめよう。それよりは、まず二人が裸で過ごす、そのことに慣れるようにしよう。それが第一ラウンドだ。そしてその次は、お互いに愛撫しあうことに慣れてみる。その二つのラウンドを済ませてから、ようやく手探りの第三ラウンドが始まるのだ。この当たり前の手続きを省略しようとすると、お互いにとって悲しい記憶が残ることになりかねない。

お互いの服を脱がしあって、もつれるようにしてベッドに転がりこんだ。そのまま二人で抱きしめあって、もうどれぐらい経っただろうか。あなたはずいぶん長い間彼の胸の中に抱え込まれたままで、ふと気を抜くと眠ってしまいそうでもある。

彼がベッドサイドのリモコンに手を伸ばして、おもむろにテレビを付けた。電灯を消した部屋に、テレビの青い光がまぶしく光る。次は天気予報です、とニュースキャスターが無闇な爽やかさで言った。

「天気予報、明日、晴れだと思う?」
「・・・明日?うん、晴れるんじゃないかな」

彼とあなたはそのように穏やかに言葉を交わした。彼はそこに乗じて、冗談めかしてこう切り出した。

「じゃあ、かけよう。それが外れたら、俺はお前の胸を好きにさせてもらうからな」

そのようであればいいと思うのだ。

彼とホテルに行くとして、3ラウンドを予定しよう。そのことを彼にもよくわかってもらって、まずは裸で一緒に過ごす、その第1ラウンドを楽しみにいこう。


・「摩擦」が痛い。

ロスト・バージンの時、基本的に女性の側は痛みを伴う。これは個人差のあるところだが、痛みが皆無だったということはなかなかない。よくてせいぜい、「痛かったけど、途中から気持ちよさが勝った」という程度になるものだ。

さてでは、なぜ初体験としてのセックスは、女性にとってそんなに痛いのだろう。これについて問うと、一部の人たち(というかかなり多くの人たち)から、「そりゃ、バージンだから」という答えが返ってくる。それは要するに、処女膜が破られること、破瓜(ハカ)の痛みによるものだという答えなのだが、これが実のところ間違いなのである。破瓜は確かに痛みを伴うものではあるだろうが、僕の経験と照らし合わせると、初体験で女性が味わう痛みの主成分は、その破瓜に伴うものではない。痛みの理由はもっと単純、またそれだけに扱うのに手ごわいわけだが、ヴァギナとその周辺が刺激になれていないので、そこを「摩擦」されることが痛いのだ。

このことについても、あなたは彼に分かっていてもらう必要がある。初体験としての痛みは、破瓜の痛みだけではないし、ヴァギナ、要するに膣の部分だけの痛みだけでもなくて、その周辺、クリトリスや陰唇からも、「摩擦」によって生じるものなのだ。だから、濡れていなければ痛いというのもヴァギナに限った話ではないし、二回目だからといって挿入時に痛みがなくなるかというとそうではない。(むしろ二回目のほうが痛かった、というのはよくある話です)

刺激になれていない陰部の全体が、「摩擦」によって痛む。特に濡れていないと、その痛みは耐えがたい。その部位は、ヴァギナに限らず陰部全体である。これが実際のところの、バージンの女性が感じる痛みの仕組みだ。このことを、あなた自身と彼が、よくよく理解している必要があるだろう。

全体がそのような状態であるわけだから、愛撫なり挿入なりに先立って濡らしておくとして、「全体を濡らす」ということが大事である。実際のところ、ヴァギナが濡れていれば大丈夫と思い込んでいる、それが一番ありがちなミスアンダスタンドであるのだ。これは本当によくある話として、「彼は丁寧に愛撫してくれる、そしてヴァギナは十分に濡れている、でも入れると痛い」ということがあるのだが、これもヴァギナが濡れてさえいれば痛くないという思い込みによる失敗なのだ。ヴァギナが濡れていても、彼のペニスを濡らしてなければやはり痛い。コンドームの表面にはグリスのようなものが塗ってあるけれども、あれでは全然不十分だ。さらに、ヴァギナの内部は潤っていても、その入り口周辺、襞になっている陰唇の部分が濡れていないとやはり痛い。むしろ、この入り口周辺の潤滑不足が、痛みの主原因であることのほうが多いんじゃないかと僕には経験的に思われるぐらいだ。(これは本当に、よくある話なのです)

「摩擦」が痛い。特に、濡れていないと耐え難いぐらい痛い。これをどのように解決するかと考えれば、その解決方法は簡単である。徹底的に、濡らしまくればいいのだ。具体的に言うなら、ツバをべちょべちょにつけまくれということである。

見苦しくなることを覚悟で、リアルに具体的にいうならこういうことだ。経験の浅い女性の場合、膣口は陰唇で閉ざされ気味になっているものである。ここにペニスを挿入すると、陰唇が中に引き込まれてしまうから、陰唇が擦れて痛い(ものすごく痛い)。だから、この膣口周辺の陰唇を、愛液なりツバなりで徹底的に濡らしておくことが必要になる。また一方では、彼のペニスの先端から根元までも十分に濡れていなければならないのだが、特に重点的に濡らしておくべきは、その亀頭部分、そして陰茎の両横の部分である。亀頭はともかく、なぜ両横を重点的にということになるかといえば、男性の陰茎は完全な円筒形ではないからだ。たいていは、上下より左右のほうが直径が大きい、要するに円筒よりもかなり平べったいのである。ゆえに、主として膣に摩擦されるのは陰茎の両横ということになる。ここが濡れていないと、先の陰唇の巻き込みと合わせて、大きな痛みの原因になるのだ。

まあこのあたり、膣口の周辺と陰茎の全体を、徹底的に濡らしておけばそれでよい。愛液が不十分だったり、ツバを垂らすのはどうもということであれば、薬局なりドンキホーテなりで、水性のローションを買ってきてそれを塗りたくってもよい。ちなみにこれらのローションは、海草を手に取ったときに分かるあのヌルヌル成分、それを集めて精製したものだから、体内に入っても害は無いものだ。(肌に合わず染みることもあるから、それは前もって少しずつ確認しよう)

ヴァギナだけでなく、陰部全体が刺激になれておらず、それだけに濡れていないと耐え難く痛いのだということ。このことをあなたとして、彼によくわかってもらう説明方法が一つある。そのことも話しておこう。例えば、女性のクリトリスは、男性の場合肥大してペニスとなっているわけだが、その男性のペニスは、幼少時には皮をかぶって亀頭を保護しているものである。そして、これは男性なら誰でもが知っていることなのだが、その皮をかぶったままの亀頭を、皮をむく具合にして露出させ、そこに指の腹なりで触れてみるとこれがかなり痛い。乾いた指先でそれをグイグイ擦ろうものなら、それはもう飛び上がるぐらい痛いのだ。それはもう、傷口に塩を塗りこむような痛さで、このことは男性であれば誰でも経験していることである。

なのであなたとしては、自分の陰部の敏感さを説明するときに、このように言えばいいのだ。「あなたがコドモのころ、亀頭が皮に包まれてて、それをむいて触ると、痛かったでしょう?それと、同じ敏感さなのよ」と。そう説明すれば、なるほど「摩擦」が痛いのか、十分に濡らしてやさしく撫でるだけなら、それは確かに大丈夫だろうと、実感として彼は理解しうるはずである。


・フェラチオはシャワールームで。

これも個人差のあるところだが、初めてのこととして男性のペニスを口に含むのには、やはり抵抗のある人が多いようである。まずは初めて見る男性のペニスにぎょっとさせられ、それがさらに硬く強張りだすと動揺させられてしまう、しかもそれを口に含んだりするものなら、その慣れない味と匂いに呼吸が止まってしまう、というところが標準的な反応ではないだろうか。

経験のある女性でもフェラチオは苦手だという人もたくさんいるので、あなたが彼をそのように愛撫するのかどうか、それはあなた自身で決定すべきところではある。そのあたり参考までに、僕が今までに経験してきた中から、実際に女性がどの程度フェラチオをしてくれるものなのか、大雑把なデータを示してみよう。これは僕の経験からのものなのでその分偏ったデータにしかならないが、それでもろくすっぽ調査もしていない週刊誌の捏造記事よりは信頼性があるものだと僕は信じる。

女性十人のうち、フェラチオについて・・・。

どうしてもヤダ・・・一人
お願いされたらするけど、やっぱし好きじゃない・・・二人
自分から進んでするけど、口に出されるのはヤダ・・・三人
口に出されるのは平気だけど、飲み込むのはムリ・・・二人
するの好きだし、飲み込むのも平気・・・二人

僕の経験では、まあこんなところだろう。これはたまたま僕がそういうやさしい女性にばかり出会ってきたということなのかもしれないけれども、思いがけず多くの女性が、フェラチオを嫌がらずにしてくれるものである。このあたり、あなたとして「みんなは、どうしてるんだろう」と思ったときに参考にしてもらえたらいい。

さて、フェラチオをしてもしなくてもあなたの自由なわけだが、僕自身がついついフェラチオをされるのが大好きであるため、僕として話す以上は、あなたにもそれができるようになってもらいたいと思ってしまうところだ。そこで僕が薦めるのは、まず慣れないうちは、シャワールームでフェラチオをするということである。

初めてフェラチオをするとき、まずその抵抗感の元になるのは、その見慣れぬ外見―――毛むくじゃらでいきり立っている―――と、その味や匂いであろう。そこで、電灯を消したシャワールームで、十分に身体を洗った上で、さらにお互いの身体を湯で流しながら、まずは彼のペニスを手で触れてみるのだ。そこでまず、それがどのような形をしているものなのか、あなたは手ごたえとして理解する。そしてそこから、あなたはひざまずく形になって、彼のペニスの先端にキスをしてみる。このとき、身体を洗いたてで、また湯の流れる中のことであるから、その独特の味や匂いも大部分消し去られているだろう。そしてそこからようやく、それもゆっくりとでいいから、彼のペニスを自分の口の中に含んでみるのだ。初めはごく浅く、そこから出来るかぎり深くとトライするような形で。それによって、自分の口の中に唾液が溜まり、彼のペニスからもいわゆる先走り液(正式にはカウパー氏腺液という)と呼ばれるものが出てもくるが、そこはシャワールームなので、気になったらそそくさと口をすすいでしまえばよいだろう。

このような手続きを踏めば、初めはどうしても抵抗のあるフェラチオだとしても、まず慣れるために試みてみるということがかなりしやすくなる。あなたとしてそれをシャワールームでしてみて、抵抗感がそれほどでもなくなったということであれば、その続きをベッドの上ですればよい。

初めてのフェラチオは、シャワールームでやろう。またあなたが、今はまだ慣れていないけれども、やはり自分として彼の身体を悦ばせることをしたいということであれば、自らすすんで申し出るのもいいかもしれない。その前後も含めて言うなら、このような情景を僕としては思い浮かべている・・・。

二度目のこととして、あなたは彼とラブホテルに入った。部屋に入った二人は、お互い切羽詰る気持ちを抑えつつ、またそのことをお互い分かり合った含み笑いを交わして、お互いの服を脱がせあう。裸で抱き合った二人は、そのままベッドに転がり込んだ。

一度目のときよりはあなたはいくらか慣れたこともあって、彼の口唇が乳首を中心に胸の辺りを這うことを、また過剰と思われるぐらいに唾液で湿らせた―――唾液を塗りつけた、というような―――彼の指先が陰部の襞の裂け目をやさしく滑ることも、いくらか落ち着いた気持ちで感じ取ることができた。ときおり弾けるように湧いてくる快感が、あなたの身体を仰け反らせもする。特に、十分に潤滑油を得た彼の指先が、数センチのことであれ、ヴァギナの入り口につるりと滑り込んでくると・・・。

彼がそのような愛撫を始めて、ずいぶんと時間が経った。彼は今も、ベッドに寝転んだあなたから見下ろすような位置で、あなたの胸と陰部に取り掛かっている。彼はいくらか息が上がったようで、苦しそうな呼吸音をしている。あなたは快感が身体に馴染み出し、それによって半ば意識が心地よく朦朧としているが、その意識の中でも、やはりこのように一方的に愛撫されているとなんだか申し訳ない、というように思った。かといって、今の体勢では、感謝の気持ちをこめて、彼の頭を両手で撫でるぐらいしかできないし、体を起こして彼を愛撫するとしても、あなたはやり方がよくわからない。また彼のペニスを、口に含んで愛撫するのがよいのだと知ってはいても、いざ自ら進んでそれをやれといわれたら、いきなりは到底できそうにない。

あなたは体をやさしく起こして、彼にキスを求めた。彼はそれに応じ、二人はベッドの上に座って肩を寄せ合う、という形でキスを重ねた。長時間愛撫を続けた彼の唇の周りは唾液に濡れ、それを発見したあなたはやさしく微笑んでその彼の口周りを指先で拭う。一息つこうか、と暗黙裡の了解が交わされる中で、あなたが切り出した話とその進みゆきはこのようであった。

「あのさ、やっぱり、フェラチオとかって、されたいと思う?」
「え?・・・ああ、そりゃまあな、されたいって、思うっちゃあ思うよ、やっぱり」
「それならさ、わたし、フェラチオ出来るようになりたいからさ、シャワールームで、挑戦させて?」
「それは、いいけど。いいよ、そんなムリしなくて」
「ううん、やらせて。でもさ、ぶっちゃけ、ちょっと抵抗あるからさ、途中でうがいとかしちゃうかもだけど、それでもいい?」
「いいよ、それはやりやすい方法でやってくれたら。よしじゃあ、シャワー行こっか」
「はい、よろしくお願いします」
「うん、俺の指導は厳しいからな。心してかかるように」
「あはは、スパルタなんだ」

このようであればいいと思うのだ。ちなみに女性の側は、フェラチオを省略して「フェラ」と言わないほうがよい。「フェラ」というと、妙に下品に聞こえるので。

ところで、フェラチオというのは、彼を愛する中でかなり強力な行為である。清潔とはいえない部位を、あなたが彼の快感のために、口唇を使って健気に愛撫するのである。それは百の愛の言葉より、真っ直ぐ彼に伝わるだろう。あなたとして、彼を愛している、全てを受け入れたい、彼を悦ばせるためなら何だってしたいということであれば、是非フェラチオができるように―――それも彼が満足できるレベルにまで―――なってほしいと思う。もちろんあなたとして、彼は彼氏ではあっても、そこまで愛しているわけじゃないのということであれば、フェラチオなどしなくてよいわけだけれども。

フェラチオは、まずシャワールームで。


***


というわけで、僕として思うところの、ロスト・バージンの手続きはこのようであるべきだという話をしてみた。バージンのベッドはオペみたいな雰囲気なので、それを覚悟する。覚悟した上で、3ラウンドは必要だろうと心の中で予定を立てておく。実際に愛撫なり挿入なりをするときには、徹底的に全体を濡らしておくことが大事だ、特に男性のペニスはその両横の部分、そして女性のヴァギナは膣口の陰唇部分を重点的に。フェラチオをするにも、まずはシャワールームで、うがいを差し挟みながらトライしてみる・・・。

もちろんこれは、個人差のあるところなので、そのような手続きがなくてもスムースにやれる人はいる。しかし一方では、このような手続きを踏んででも、やはり強烈な痛みが伴う人はいるのだ。そのあたりの差は、女性の側が自慰を経験しているか、またそれを頻繁にしているかどうかということにも関わってくるだろう。自慰によって陰部が刺激に慣れるということも、また当然のこととしてあるから。(セックスが不安な女性は、自慰を十分にしてみるといいと思う。僕は自慰をする女性をかわいいと思うし)

それにしても、やはり初めてのこととしてセックスをするときは、これぐらい慎重な心積もりをしておくのがよいと思われる。女性としてこれを読んでくれているあなたは、上手くこのあたりの手続きを踏んでくれるよう、彼に話し、また彼を誘導しよう。またなんであれば、この文章自体を、彼に読んでもらうようにしてもらってもいい。その場合の男性の視点でも読めるように、僕としては工夫して書き進めているつもりだ。このあたりの手続きの話を彼にして、彼がそこからどのように振舞うか、それはあなたとして彼の人となり、その本質のやさしさを確認する機会でもある・・・。


あなたの初めての夜が、すてきな夜になりますように。







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