さよならアミヨさん、ネット輿論に別れを告げるときがきた
すでに工作員アミヨさんを想定しないわけにいかない
そもそも、教育やら国防やら、文化やら芸術やら、ハラスメントやらセクシャリティやら、すべてについてネット世論を醸成・構築するアミヨさんたちがいるとして、そのアミヨさんたちがすべて中立で公正な無作為のアミヨさんと想定することが現時点で出来ない。陰謀論のムードに耽るのは馬鹿馬鹿しいことだが、一方で国家や諜報や人類の歴史というのは、「そんなバカな」みたいなことを本当にやってきているものだ。どのように考えればいいかというと、日本に「弱くなってほしい」と望む人々はたくさんいて、日本が思想として「バラバラになってほしい」と望む人々がいる、「停滞してほしい」「士気低下してほしい」「生産力を失ってほしい」と望む人々がいるのだ、そのことは現在東欧で起こっている戦争とプロパガンダ合戦を見ていたら誰にでも察せるところだろう。日本が強い国で思想的に一丸となり生産力を高く持ち続けるというようなことを、隣国は決してよろこばないのだ。
二〇一六年、人工知能が書いた小説が文学賞の一次審査を通過している。それだって現在から六年前のことなのだから、そのときより人工知能は遥かに性能を向上させているだろう。ことし二〇二二年、ある文学賞では、人工知能にあらすじを書かせて、人工知能と共に執筆した小説が星新一賞という文学賞に入選を果たした。同賞ではすでに、応募される作品の4%が人工知能によって書かれているそうだ。
人類はこの人工知能の作文能力を、小説だの文学賞だのという、ふざけたことにのみ使うだろうか。
まして国家レベルの諜報で使おうというような人工知能の性能は、個人や小さな大学の研究室が使うそれの性能とは比較できないだろう。
何の証拠もないことだし、陰謀論に耽りこむことは無意味な空想だ。だからといって、世の中に陰謀が「ない」わけではないし、われわれがウェブ上で見かけるコメントやSNSのツイートに「政治的な工作意図の入りこんだものはゼロです、すっきり完全にクリーンなものです」と断言するのも逆に根拠のなさすぎることだ。誰でも Amazon で商品を購入しようとするとき、その商品のレビュー欄がたどたどしいニセモノの日本語で埋め尽くされており、評価星の数値が露骨に工作されているのを見かけて笑うことにすでに慣れているはずだ。
一般的な証券会社だってすでに投資売買のタイミングに人工知能のアドバイスを導入しているのはすでに常識的なことだし、あるいは若手のお笑い芸人が「ネタ」を作るのに、人工知能の発想を借りていたとしてそのことにあなたはそこまで驚くだろうか。
この中でアミヨさんだけ例外だとどうして言えよう。
もちろんひとつひとつの議題について鋭敏にその工作コメントが投下されているのかどうかは知らない。そうした端っこのことではなく、全体として日本のムードを惰弱にするように、腐敗させるように、沈滞させるように、混乱するように、行き詰まるように、非生産的にさせるように、争いあうように、無気力にさせるように、憂鬱にさせるように、硬直するように、弱気にさせるように、足の引っ張り合いをするように、という継続的な工作が為されるということは十分ありうるのではないだろうか。あくまで「仮に」と前置きして問題ないと思うが、わたしが対日本の諜報戦略担当だったとしたら、 "最低限" そのようなことは仕掛けようと思う。そのことが実体としてどのていどの効果をもたらすのかは明らかでないとしても、それはやっておいて損のないことなのだから。
諜報戦略を担当している者が、「特に何もしていません」「いちおうずーっと眺めてはいますけど」ということで業務に◎のボーナスがつくのであれば、世界はまったく平和で、その役職のポストは世界で一番気楽な仕事のものになるだろう。
二〇二一年の四月から十二月末まで、日本の領空付近に領空侵犯のおそれがある機影が現れ、防衛のために自衛隊機がスクランブル発進した回数は785回に上る。一か月あたり87回、毎日3回ぐらいはスクランブル発進しているということだ。隣国は日本に「何もしていない」だろうか。
人工知能の可能性も含め、われわれが目撃しているネット世論の情勢は、すでにその土台と背後に、公正ならざる政治的工作の結果も見込まねばならない。われわれはまずその意味でとんでもないウソを毎日掴まされている可能性が大いにある。
あなたは無数に存在するアミヨさんのその本人をひとりだって直接確かめたことはないのだから。
(以降、本稿において陰謀を想定するという話は含みません、ここ限りです)
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