中休み /Quali,恋愛レクチャー集
お疲れ様です。丸暗記は、はかどっていますか。
中休みのコーナーを設けました。ここまで、余裕で丸暗記してきたわ、という人は、さすがに少ないと思います。中には、「面白そうだから、ナナメ読みしてるだけ」という方もいらっしゃるはず。あるいはもちろん、「ちょっと本気で、丸暗記しようと思っているの」という方もいらっしゃるでしょう。「全てとは、言い切る自信はないけれど」と。どの方も、どうぞそのままお聞きください。
できれば、「ちょっと本気で、丸暗記しようと思っているの」と、真剣に捉えてくださっている方へ。その方の気持ちの後押しをするために、このコーナーを設けました。
人には、やる気が出ないというか、出きらない、ということがあったり、調子のよかったものが、調子が下がってくるということがあります。
そんなときはこの中休みのコーナーへどうぞ。
あなたには、やる気が無いのではありません。やる気を出す必要がある、のでもありません。やる気はあるのに、何かか不明瞭になったから、やる気が曇ったのです。
あなたは、すりガラスの向こうのボンヤリした景色に感動することができますか。できません。そのボンヤリした景色を元に、熱心に絵を書けとか、カメラを持てとか、俳句を詠めとかいうのは、無茶な話です。
曇りを拭き取ればあなたは勝手に感動し、燃えます。曇りを拭き取りましょう。明瞭であるべきものを、明瞭になるまで拭き取りなおすのです。明瞭なものへ向けてなら、あなたはどれほど力が出るか、実感してください。
1.スピードを落とさないでください。あなたがなぜスピードを落とすか教えましょう。「わからない」と感じたからです。けれども丸暗記にわかるもわからないもありますか。昭和の次は平成ですが、あなたにはそれが「わかる」「わからない」? 知識は「わかる」ものではありません。吸い上げてください。喉につかえたら無視して先に進んでください、どうせあとで周回します。
料理と食事を混同することのないように。あなたはガツガツ食べるのです。ガツガツ食べるということは、次々に皿が空になっていくということです。爽快ですね。その食材が何だったかは料理人が気にすることです。あなたは何を食べても、食べたなら栄養にしています。進んでください。
2.知識を喜んでください。ここまでの講は、「いたわり」「積極性」「ポジティブシンキング」「甘え」「自己中心性」でした。これらのどれをとっても、「どうでもいい」と言えるものはひとつもありません。あなたは重要なことがらの知識ばかりを得ています。喜べば、それは駆け回っている脳への応援になります。
3.知識を入手している、と実感してください。これは間違いない事実です。たとえばあなたに、「甘えについて作文せよ」という課題が出される。あなたのペンは猛烈に走ります。先日までのあなたには無かったことです。あなたは知識を手に入れたのです。知識が何になるかといったら、第一にそれになります。ペンが猛烈に走る人間は、ペンがだらだらする人間より魅力的です。あなたのペンは、自分についての言い訳を一切書かないでしょう。
4.知識は役立つことを実感してください。たとえばあなたは、友人の彼氏にこう言いましょう。「わたしだって、あなたをいたわりたいわ」。あなたの持つ脅威は、先日までのあなたのそれとは比較になりません。あなたは本当に、構築された知識として、「いたわり」が何かを知っているからです。
5.丸暗記する理由を確認してください。丸暗記するのは「あなたのため」ではありません。丸暗記するのは、「丸暗記しろと書いてあったから」です。それ以外に理由は必要ありません。
6.時間は掛からないことを確認してください。丸暗記といっても、一週間も掛からないものです。「わずか」一週間です。一ヶ月後にはすっかり忘れている。忘れているのに、知識だけが残っている。一週間、メモ帳を湯水のように使った……それは人生においてたいした出費ではありません。
7.思考は丸暗記に劣る、と知りましょう。問題文を読む、「ええっと……」となる。少し考えればわかるかもしれません。でもその錆びついた引き出しが実用に耐えると思いますか。中身の以前に、引き出しが滑らかに動くまで仕込むのが先です。
8.考えるという「お遊び」をやめましょう。考えるのはお遊びなのです。百貨店に行き、案内に文具のフロアを尋ねてみてください。「7階でございます」と即座に答えてくれます。丸暗記です。それを「ええっと……」と遊び始めたら腹が立ちます。いまあなたが求めているのは、脳が遊ぶことでなく仕事をこなすことです。
9.あなたの脳を信頼してください。一ミリも叱ってはいけません。脳という偉大な器官は、あなたの一億倍も賢いものです。もしあなたのほうが賢いと思うなら、あなたが脳を自作しなさい。あなたの脳はもともと知識と仲良しです。あなたがオバサンのように口を挟むと、仲がこじれるのです。
10.知識を信頼してください。あなたは丸暗記して手に入れた知識を、使わずに生きることはできません。あなたは近隣の電車の路線図を丸暗記しています。A駅に行く……というだけで、丸暗記した路線図、その知識を「どうしても」使ってしまいます。知識は手に入れるだけでよく、「どう使えるか」など品定めする必要はありません。
11.知識から名札を外してください。それは誰の作品でもありません。あなたは僕の語りと付き合うのではありません、知識と付き合うのです。あなたの目の前にある、ゴロリとした手応えの知識だけを相手にしてください。たとえ僕がいま死んでいたとしても、ここにある知識は変質しません。
12.いま主役はあなたであることを自覚してください。確かに本レクチャーの書き手である僕がいます……けれども、あなたが知識を吸い上げるのに、何を僕に挨拶することがありますか? 僕の話を聞いていると誤解すると、だんだん気が滅入ってきます。違います。あなたはいま一人きり、知識と取り組みあっているのです。
いまあなたは何をしているか、何をすればいいのか、明瞭になりましたか。明瞭になったら、あなたのやる気が、あなたの退嬰を許さないはずです。
では以降も引き続き、脳の重要なスポーツを。
署名を残します。この署名も、差出人ではありません、あなたの得るささやかな知識のひとつです。
九折空也
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